*3.「いろいろな場合を調べる」ということの定式化 #00001-test-01 - 第一の例を,「4角中点」と呼ぶことにします。 **3.1 「4角中点」で行っていたこと -「4つの点がある。それを結んだ四角形ABCDがある。4つの辺の中点をとり,それを結んだ四角形EFGHがある」 -別の見方をすると,次のような対応がある。 -- Φ : ABCD → EFGH -四角形の集合から,四角形の集合への対応があり,このことについて分析するのが,「いろいろな場合を調べる」ということだ。 **3.2 「そのような調べ方」を可能にするための「作図」についての分析・設計・実装 -上記のようなことを,「この図だけ」について行えるようにするソフト開発もありえます。 -しかし,「同じようなことを,もっと幅広い図に対して可能にしたい」というのが,GCなど,動的幾何ソフトの基本的なスタンスです。 -GCでは,次のような設計をしています。 -- 図を関数として見る -- 「独立変数」として,いくつかの点がある。 --「点」以外に,幾何的対象として,「線分,半直線,直線」, 「円」, 「数」などを考える。 --最初に複数の点があり,それらをもとに階層的に幾何的対象が構成されていくものを,「図」として扱う --最初の点を動かしたときに,総体としての図がどう変わるかを観察することが,動的幾何によって,可能になる,もっとも基本的なことである。 **3.2 「類題」つくりとしての「条件変え」 - 「4角中点」の類題として,「4角形」→「4角形」という種類の問題を考えることができます。 - 「4角中点」では,「4つの辺の中点」という作図をしていましたが,「その条件を変える」ことで,いろいろな類題をつくることができます。 *** 「中点=1:1」を変えると |#00003-test-01-2|#00004-test-01-3| *** 「中点」を変えると |#00005-test-01-11|#00006-tetst-01-12| -他に「4角形」を「3角形」に変えるなど,いろいろな注目の仕方はありうる。 ** 3.3 「組織的な教材開発」や「カリキュラム研究」の可能性 *** 「4角中点」は,明治時代から「ある」 -少なくとも大正時代の「幾何学つれづれ草」という本の中では,変形しながら考察することが取り上げられています。 |上の例にかぎらず,四辺形に出会ったときにはいつでも凸四辺形だけにとどめずに,凹四辺形ならばどうか,またねじれ四辺形ならばどうかと吟味してみて,この三者を通じて同じ定理の成り立つことをたしかめておくごとは,すなわち見聞きしたところのものをとって以て自家薬籠中のものとすることは有益な練習である。総じて生徒の頭と先生の頭とが違っている点は,すべてを通じてこの種の練習ができているかとないかにあるのである。生徒にしてこの種の練習ができていればそれは優等生であり,またもし先生にしてこの種の練習ができていなければそれはすなわちヘッポコ先生である| (秋山武太郎, 初版 大正8年) ***「いろいろな指導の工夫」は,「この問題に限定」して,ずっと「ある」 -4角中点という図に関しては,教科書でもいろいろな工夫がなされています。 -でも,「同じことを他の教材」では....ほとんど行えていません。 -なぜでしょう。 ***「紙上で,フリーハンドで行う」のでは,現実的に「無理」 |#00005-test-01-11| -たとえば,この図に関して,紙上では「探究が成立しにくい」 -つまり,「いろいろな場合について調べる」という,探究は,現実的には「特定の問題でしか実現しにくい」 -その適用範囲をひろげようとするのが,「動的幾何ソフト」である。 ***「道具アリ」という前提で,「こういう学びを可能にする」というスタンス - ***実際に,取り組む価値がある問題は,どれくらいあるのだろうか。 -理念だけでなく,「実際に具現化する」のが,教材開発に関する研究だと思います。 -そして,その系列化等の可能性について検討することが,カリキュラム研究「の一部」だろうと思います。 ---- ** 3.4 「4角中点」に関する別の深掘りは.... - 「広大生の学び」に応じて,別の深掘りが可能なはずかもしれない。 -これは,「前回の様子」に依存しますね。 #00001-test-01 **3.5 関連すること(1)図形概念について - 四角形って... -- 一般には,「凸四角形」が想定されていることが多い。でも,「くさび形」も扱われていることも,ないわけではない。GC上での操作では,生徒はかってに動かすわけで,「4点の集合」を結んでいるだけなので,「制約の気持ちの中にある」 -- 「いろいろな四角形について調べよう」というときに,代表的なものとしては,正方形,長方形,ひし形,平行四辺形,台形が,特別な四角形であって,他は一般の四角形だろう。でも,「それが正しい」というわけではない。問題によっては,たこ形や等脚台形があってもいいし,円に内接する四角形があってもいい。でも,最初から「すべてのリスト」を考える必要があるわけではないし,そもそも,そんなリストは「ない」 -暫定的な枠組みから始まって,そこで一定の結論を出し,その妥当性を考えて,「もう一度取り組んでみる」。 -この「もう一度取り組んでみる」ことを気楽に行わせてくれるということが,きっと大切なのだ。 -フリーハンドでできるなら,それでいい。念頭でできるなら,なおいい。そういうのでできない場合でも,「やりたい」と思うときに道具としてGCを使うのも一つの手。そういうことだと思う。 -重要なのは,思考の「じゃまをしない」こと。そして,「やりたいと思うことができる」こと。 **3.6 関連すること(2) 観察(注目)するモノ/コトの多様性 -この問題の場合,私たちは,「どんな四角形に対してどんな四角形がつくられるのか」というコト(関係性)に注目するのが,最も基本的かなと思っています。 -でも,「この図形」を観察するとき,そういうこ「だけ」注目に値することかといえば,そんなことはありません。他にもいろいろあります。 -モノに注目するなら,..... -四角形の他に,三角形もあります。 -それらの構成要素としての,点,辺,角などもあります。 -コトに注目すると,それらに関して成立しているさまざまな性質などもありますし,それらがどういう動きをしているかなどもあります。 -しかも,「それがこうなっている」というのは,解釈であって,正しいかどうかもわかりません。 -子どもによって,どれを選択し,どういうことをし,そしてどういう場合について観察し,それをどう解釈するのか,それはがかなり多様に現れるのが,動的幾何ソフトの「数学的探究」なのです。 -