*0.はじめに **0.1 「感想」に関連して -AIが発展しても,「教育」という仕事は人間がすべき仕事,残る資格のはずです。自身をもって,この21世紀的な仕事に取り組めるようにしてください。 --もちろん,「ただ,機械的に教えることしかできない」なら,いらなくなるかもしれません。 --少子化の中で,「教育に携わる人口が減っていく」ことは否定できないことでしょう。 --でも,「未来への投資」としての教育が,かなりおろそかになってきたのが,この30年です。 --これ以上,悪い条件の中で取り組んでいくことにはならないでしょう。 --でも,そこで求められる教育は,「これからの時代に向けた教育」であり,「ICT等をうまく活用する仕事の仕方」が不可欠であることもまた,事実です。 --GUGAスクールで始まったことは,「もどるはずはない」のです。 -ここでの模擬授業は,「実際の中学校での授業とは違う点」がいくつもあることはたしかです。 -でも,「全く違う」わけではないこともまた,事実です。 -- みなさんは,ここで扱うことを「一度は学んだ方々」です。まったく新しい学びをしていく中学生とは違います。 -- でも,中学生にとっても,「まったく新しい学びだから,教科書を順番に解説すればいい」というわけではありません。 - 知ってる? 「習得」「活用」「探究」 **0.2 鈴木実践に関連して -感想と同じフォーラムにするはずが,設定が違っていて,ごめん。 -でも,....感想をかくの,遅いね。見るのが遅いのかな。 -みた方にとっては,いろいろと得るものが多いビデオだったでしょ。 -中学生向けの授業としての,いろいろな「よさ」がよく実感できる鈴木実践です。 *1.(この授業用の)「教科書」に準じていうならば - 「コロナ禍」で加速されている「変化」を感じますか? -この変化が収まっていくまでには,10年くらいが必要になるでしょうし,それまでは教育現場はいろいろな混乱が続くだろうとおもいます。 -でも,少なくとも「みなさんの目の前に登場するであろう子どもたち」は,もう「去年から,GIGAは当たり前」という環境で育つ中で,「みなさん自身が時代遅れになってしまうリスク」が高いのです。 **「これまでの学び」に準じて「ICTを使う」ことが,まだ当分続くだろうけど - みなさんが育った時代は,そうでした。 - これからも,一定期間はそうでしょう。 - そこには,「昔の環境しかなかった」から,特に問題になることもなかったとおもいます。 - でも,「GIGAを含めたいろいろな環境が整っている」中で,あるいは,「地域によっては先進的な試みをしていく」中で,それでもずっと「今のまま」でいられるはずはないとおもいます。 ** 「次世代の学び」などのことばは,岡崎中などが好きだったけど....。 - まちがいなく,そういうことに,みなさんがアンテナをはる必要はあると,私はおもいます。 ** 「学習指導要領解説」での「グルグル」 - 算数・数学の学習過程のイメージ - きっと,卒論等でよく「使う」ことでしょう。 - そこに,何を「感じ」,そして,「何に取り組む」のでしょう。 ** 「受け身の学びの個別最適化」の手段としてのICT -きっと,これは時間とともに,充実していくと思います。 ** 4/20からの追加 -印刷したものにいくつか追加します。 *** 「今の時代でのICT利用の劇的発展」を象徴するものとしてのchatGPT -日々,いろいろなことが変化し,またいろいろな立場の人からいろいろな意見が飛び交っています。 -「そういう劇的な変化の瞬間に遭遇している」って,映画みたいじゃないですか? -それを「当事者意識をもって」観察し,そして自分の価値観や行動に反映していくことが,きっととても大切なのです。 **** 産業や人の働き方はどう変わるのでしょうね。 -みなさんが育てるであろう「子どもたち」の未来が,そこから感じられるのです。 **** 「教育」への直接的な影響は? -学校での教員の仕事に直接関わることって, -「教える」ことの中身が,これまでのものからきっと違うところに重点が少しずつ変わっていくはずです。 -そう思ったときに,「個別最適化」と「協働学習」というキーワードは,どう理解することができますか? ***他にも,2030年までには,いろいろなことが変化していきそうです。 - 余談ですけど,2040年には,かなりの労働力不足が予測されるという報道も。 **「対話と探究」を支援するものとしてのICT -この授業では,そういう部分に注目しています。 -それは,「体感的に実感している人もいるかもしれません」 -しかし,大半の人にとっては,「意識的に理解し,取り組もうとしない」と,たぶん,何も身につきません。 -そういうことを踏まえると,「次のような問い」をしたくなるわけです。 *2.前回,何をした(学んだ)ことになるのだろう **2.1 きっと,今後も聞くことでしょう。「前回,何を学んだ?」 - まさか,「中点連結定理について学んだ」なんて言わないですよね。 -- それは「中学生としての学び」であって,「教育学部の学生としての学びではない」です。 **2.2 「対話」という要素として,....何がみなさんには「残って」いますか? - 対話 -- 自分と数学の問題の対話 -- 自分のコンピュータ(あるいは,GCというソフト)との対話 -- 自分と友達の対話 -- 教室全体での対話 - そして,これらは,もちろん自然に成立している側面もあるけれど,「授業」としては,かなり意図的に「ねらっている」ものです。 **2.3 「探究」という観点からみたとき,何がみなさんには「残って」いますか? -ときどき,「解決の結果としてえられた数学的知識」のみをしっかり覚え,他は忘れている方がいます。 -それはそれで,わからないでもありません。 -でも,教育的な面からみると,それではもったいないのですよ。 *3.「いろいろな場合を調べる」とは (4角中点を一つの例として) **3.1 「いわゆる教科書的な問題」とは - 「いわゆる教科書的な問題」では,証明すべきことを明示しています。 - 「いわゆる教科書的な問題」では,....どんな図が掲載されているのでしょう。 - そこには,どんな意図があるのでしょう。 - 逆に,生徒は「そういうものとして理解してくれている」のでしょうか。 - 理解していないとしたら,「そういうものなのだ」という理解をサポートする必要があるともいえますね。 **3.2 「4角中点」の問題は,「実際の教科書」では? - これは,「いわゆる教科書的な扱い」ではありませんでした。 -どういう扱いをしていたのでしょう。 -そこにはどういう意図があるのでしょう。 **3.3 「4角中点」の問題に関して,「前回はどういうアプローチをした」のでしょう。 - 前回,どういう流れで取り組みましたか? - それは,「他の図でもできること」ですか? それとも「この図だからできることで,他の図ではできないこと」ですか? -- 実際ほとんど多くの問題に関して,「そういう探究の仕方を可能にするもの」として,GCというソフトは設計・実装されているのです。 -- つまり,「そういう探究の仕方」を「汎用に可能にするもの」が,GCであり,他の多くのソフトは,そういう側面を持っています。 -- 別の言い方をすれば,4角中点に関することは,かなり昔から当たり前になされていたけど,他の図について同じようなことができたかというと,フリーハンドや定規・コンパスでは,実質的にできなかったことなのです。 **3.4 大まかな流れ *** (1) 図について(関数的に)理解する - ABCDを元にして,EFGHがきまっている。 - ABCDの形を変えると,EFGHの形が変わる。 - その対応の様子を,対応表(ワークシート)にまとめてみることによって,理解が深まるのではないだろうか。 *** (2) 図形を動かし,観察し,対応表をつくる - 「どんな場合」を考えるといいでしょうか。 - ABCDの種類をリストアップして,観察します。 - その種類は,最初からきまっているわけではありません。足りないと思えば,追加すればいいでしょう。 - ABCDが平行四辺形の場合といっても,本当は無限にあります。 - 観察しているのは,その中の「一つ」あるいは「いくつかの場合」でしかありません。 - 観察したものが,どんな形になっているのかは,「自分が解釈」しているものです。 - つまり,なにかを見落としているリスクも十分にあります。 - そこに提示されている図が正しいからといって対応表が完璧なんていうことは,「ない」のです。 - つまり,「対応表をつくる」ことは,出発点であって,終着点ではないのです。 *** (3) その結果を吟味する - そこから,いろいろなことを考えます。 - 「すべてに共通すること」もあるでしょう。 - 「特殊な場合」に注目することもあるでしょう。 - 一言でいえば,「目の前には,現象があり,その中に,数学的に証明するような価値があることってなにかをさがす」わけです。 *** (4) その命題に対して,どう取り組む? - 「証明すること」もたしかに一つの選択肢です。 - でも,それだけではありません。 - 「反例」なら,一つ見つかるだけで,「そんなことは成り立たない」ことがわかります。 - 逆に,「どんなに探しても反例が見つからない」というのは,「妥当性」をサポートしてくれます。証明する価値もありそうです。 - 意外な発見もありうるかもしれません。 *** (5) 証明などの活動 - *** (6) さらに吟味や発展 - 問題によって,どこまで深く探究できるかは,「変わり」ます。 **3.5 つまり,これって,「つっこみどころ満載」。 -だから,対話の可能性もあるし,対話によって,「変わっていく可能性」もある。 -毎回同じ流れになるとは限らない。 -「主体」があってこそ,生み出されていく授業になる。 - 何をどう取り上げ,どう次に進めていくかという「教師」の存在,マネジメントがとても重要になる。 **3.6 「そういう探究ができる例」って,他にもないのかな。 - 同じような流れで,別のことだけど,やはり最初には気づかなかったなにかを発見し,そして, -そういうことって,できるんでしょうか。 -それを確かめるためにも,「類題」をつくってみたり,検証してみたりすること,それが大切です。 * 4.「4角中点」の類題 ** 4.1 条件変え / what if not ストラテジー / ... *** 元の問題 「四角形ABCDの4つの辺AB,BC,CD,DAのそれぞれの中点をE,F,G,Hとし,それらを結んで四角形EFGHをつくる」 *** 「変えるとしたら」....たとえば -(1) 「中点」ではなく... -(2)「四角形」ではなく... - 今日注目したいのは「辺の中点」ではなく,「角の二等分線」 *** 変えてできた問題 「四角形ABCDの4つの角∠A, ∠B, ∠C, ∠D, のそれぞれの二等分線を引き,それぞれ隣り合う2つの二等分線の交点を,E,F,G,Hとし,それらを結んで四角形EFGHをつくる」 |#00003-test| -前回と同じように調べてみよう。 -そして,証明に値するような問題を見つけてみよう。 *5.「授業ビデオ」 -自分が取り組んだ課題に関して中学生が取り組んでいる授業のビデオって,ある意味,「よくわかります」 -そういう意味で,前回は,鈴木実践でした。 -今回は,玉置実践です。 -1992年。みなさんが生まれる前の授業です。 -もっといえば,きっとこの問題に関して,こういう取り組みをしたのは,日本ではもちろん,世界でも初めてかもしれない。 -そういう授業です。 -使っているコンピュータの様子には,「歴史」を感じることでしょう。 -当時は,これで,教育機器としては,「最先端」でした。(この,NECの9801という機種がメジャーでした。その次が富士通のTOWMSやFM-R) -もちろん,インターネットなんてないですよ。(普及し始めるのは,1995年。実質的にwindows95の登場から。) -フロッピィなんていうものを使っていますし,メモリも640kbしかありません。(今は8G=8000MB=8000000kbとかが当たり前。) -でも,授業は今でも通用するはずの授業です。 * 6.課題 - 今日の課題に関連してどこまでいけるかに応じて,少し課題を提示する可能性はあります。 - 授業ビデオを試聴して感想をまとめる -- 「玉置実践」 --- (1) 課題の工夫点 --- (2) 先生の行動や発言について --- (3) 生徒の活動や発言について --- (4) その他 --- この授業は,1992年の授業です。使っているコンピュータも古いですが,「授業」としては,決して古さを感じさせないと思います。