*0.はじめに **0.0 「前回,何を学んだ?」 -「角の二等分線でできる四角形」に関する探究としては,本当は時間足らずでした。 -でも,「続けてなにかをしたい」と思うかどうかも,大切だということも実感として思ってほしいです。 -「自分で続きを探究する」もあっていいでしょう。 -「本に書いてあることを読みながら,再体験する」もいいでしょう。 -「玉置実践のビデオをみながら,実感する」もいいでしょう。 -そのことを通じて,「学びうることがきっとある」と思うからこそ,素材として扱っているし,また,「このあとね,こうなるんだ」と解説しきってしまわない方がいいだろうと思って,「その先はみなさんにゆだねている」のも,またたしかなのです。 **0.1 そういう意味では余計なことなのかもしれないけど。 -でも,「放置しておくと,みなさんが学んでくれるかどうかは,ちょっと心配」なので,余計なことかもしれないけど,前回を簡単に振り返っておきます。 *1.「角の二等分線でできる四角形」の問題から「探究」を考える **1.1 観察は簡単ではない。 -「一通りのことを調べる」ことをしました。 -それって,「できて当たり前」と思うでしょう。 -「正しい図が目の前にあるのだから,誰でもできる」と思うでしょう。 -多くの場合,次のような観察結果になります。 |ABCD|EFGH| |正方形|点| |長方形|正方形| |ひし形|点| |平行四辺形|長方形| |台形|四角形| |四角形|四角形| -そして,「言われたことをやればいいだろ」と思うなら,「一通りのことをしたのだから,それでおしまい」と思うでしょう。 -で,みなさんは,その簡単なこと,うまくできましたか? -たしかに,「間違ってはいない」ともいえます。 -でも,振り返ってみて,思いませんか? -自分の目は節穴だったと。 -そう。「観察」は簡単ではないのです。 -もともと,手作業で行うとき,図も正確にはつくれません。そういう意味でも,描画も観察もあまりきちんとできないから,数学としては証明などに重きがしまうのは妥当なことかもしれません。 -コンピュータ等で正しい図をかけるようになったから,観察は簡単にできるようになったのでしょうか。 -たしかに,「みてはいます」 -正しいことをコンピュータが示してくれるから,証明や推論などはいらないのでしょうか。 -「みてはいても,みえてはいない」と思いませんか? -それを打破するためには,何が必要なのでしょう。 **1.2 「ルーチンワーク」の結果は,「出発点」 - まず,きまりきったこととしてのルーチンワークとして,「いろいろな場合を調べる」をしたとします。 - たとえば,大学生にわざわざ考えさせるのですから,「そこになにかがあるはずだ」と思っていいでしょう。 - そこでは,「いろいろな気づき」がありえます。 - その気づきは,誰もが必ずできるとは限りません。 - 誰かの気づきがあったら,「そういえば,となにかをしたくなり,そこからしっかり観察等をしてみると,さらになにかが....」 -私は,そういうのが,ICTによる「主体的・対話的で深い学び」の支援だと思います。 **1.3 ICTによる支援 -つまり,まず対話があると思います。 -その対話は,自分とコンピュータであったり,自分と友達であったり,生徒と先生であったり,自分だけであったりいろいろですが,でも,対話があります。 -それはただの繰り返しではなく,少しずつ深くなっていると思います。 -そして,それを繰り返していく中で,「おもしろくなっていく」と思うのです。つまり,そこに主体的なかかわりが生まれてくるように思うのです。 -先生が「やれ」というからやるのではなく,「自分でやりたいと思うからやる」世界が広がっていると思うのです。 -それが可能になる上では,いろいろな要員があります。 -ソフトそのものの設計もあるでしょう。 -iPad等のハードの設計もあるでしょう。 -発問を含めた教材もあるでしょうし, -授業をどう展開していくかという授業設計もあるでしょう。 -いや,そもそも,そういうことをしたくなるのは,数学の魅力の奥深さだと言ってもいいです。 -いや,いろいろな生徒がいたら,感性も違うし,対話で深まっていくことなど,それが人間の魅力だと言ってもいいです。 -いずれにしても,「そういうのって,いいよね」というのが,このCIIの授業で実感してほしい「出発点」なのです。 **1.4 探究 -通常,特に高校数学を意識すると,「模範解答」があります。短時間でそれをつくれるようにすることが,一つの共通のねらいだったりします。 -それは,「習得」という観点でいえば,「正しい」と思います。そして,そういう学びを否定するわけではありません。 -あたえられた知識,あるいは定理を,「ちょっと応用すると,こんなこともできるよね」という世界としての「活用」もあります。ちょっとした発展問題なども解決できるようになるというのは,ある意味で「活用」を具現化しているといっていいでしょう。 -「探究」というのが,重視されるようになった背景にはいろいろな要因があります。 -「答えがわかっていないような問題に取り組むことが,これからは大切だ」というような主張もあります。 -一人ではなく,みんなで協力していくことが,一つの重要な資質だというのもあるでしょう。 -自律的であることが,大切だということもあるでしょう。 -「決まりきった解決」以外に,実はいろいろな可能性がありうると思ってもいいでしょう。 -特に,「紙と鉛筆などの伝統的な道具だけで取り組む」場合と,「コンピュータ等を使ってよい」場合では,その探究の様子がいろいろと変わり得ます。 -何を使っていいかというルールや,発問など,問題の出発点を指示するのは「先生」と思えば,それを変えることで,いろいろな授業の可能性がありうる。 -それが,このCIIの授業の取り組みの出発点でもあります。 -ただ,そういうようなことへの注目は,決して新しいことではありません。 -たとえば,附属岡崎小学校で取り組んでいる生活教育のようなことの背景には,戦後の教育というか,20世紀の教育学者の代表としてのDeweyなどの思想もあるといえるでしょう。 -いや,それだけでなく,もっと現代的な教育思想を反映してもいいと思います。 -少なくとも,「受動的な学びとは違うものを生み出したい」と思うとき,そこになにかの手がかりがあると,実感してほしいのです。 **1.5 探究プロセスの学習は,理科では当たり前 -たとえば,「科学的探究」というのは,理科教育では当たり前のことです。 -知識の学びの他に,プロセスの学びがあるわけです。 -数学教育でも,数学的モデル化とか,統計的探究プロセスとか,そういうものもあります。 -数学的考え方の中にも,一般化・特殊化・類比などもありますし,条件変え(what if notストラテジー)など,数学を発展させていく上で大切なこともたくさんあります。 -そういうことにも注目しようということでもあるわけです。 -みなさんが高校生までで受けてきた数学教育の中でも,きっとそれなりには意識されてきました。 -でも,特に大学受験に際しては,違うことの方にずっと重きがあったために,そんなことは意識してこなかったことでもあるでしょうし,あるいは体験してこなかったことでもあるかもしれません。 **1.6 「似たような問題でも行えそうなプロセス」は何だろう。 -「四角形の4つの辺の中点を結んでできる四角形」と「同じように」「角の二等分線でできる四角形」について取り組んでみたわけです。 -共通して通用すること,いろいろあったと思います。 -「似たような問題」でも,きっと通用すること。 -そういうことに注目していくことが,一つの注目の仕方でもあるわけです。 **1.7 「いろいろな問題を発見することができる」のは,豊かな教材である指標 - いくつの問題をここから生み出すことができましたか? **1.8 実は後ろに隠れているいろいろな数学的なもの -見つけましたか? たとえば,内心や傍心 -豊かな教材の背景には,そういう伝統的な数学的対象が関わっていたりするのです。 *2. 第二の例としての「二つの正三角形」 ** 2.1 原問題 -線分AB上に点Cをとり,AC,CBを,それぞれ1辺とする正三角形△ACD,△CBEをABの同じ側につくると,AE=DBとなることを証明せよ。 -スケッチしてみようか。 -何がいえそう? ** 2.2 動かない図で,証明できるよね。 -証明から何がわかる? ** 2.3 「動かす」(その1) |#00004-0428-01| ** 2.4 「動かす」(その2) |#00005-0428-02| ** 2.5 問題文を変える(正三角形を正方形に) |#00006-0428-03| -どこを結ぶといいんだろうね。 ** 2.6 問題文を変える(正三角形を三つに(その1)) |#00007-0428-04| -なにかおもしろいことあるのか? -なにか追加した方がいいのか? ** 2.7 問題文を変える(正三角形を三つに(その2)) |#00008-0428-05| -なにかおもしろいことあるのか? -なにか追加した方がいいのか? ** 2.8 問題文を変える(三角形の上に正三角形を三つを三角形の上に正方形に) -さっきの問題は,「三角形のまわりに,正三角形を三つつくる」と解釈しなおしてみると,三角形のまわりに正方形を乗せると,アノ定理になりそうだけど,どうだろう。 |#00009-0428-06| -ついでに線分で結んでみると,次の図になる。 |#00010-0428-07| -なにかおもしろいことあるのか? -なにか追加した方がいいのか? *3. 今日できたことと,次回までの「課題」 - 次回に向けて -2週続けて「おやすみ」になりますね。 -3週間後って,....ちょっと心配ですね。 -二つの課題をつくっておきたいと思います。 **3.1 課題(1) --今日できることは限りがあると思います。 --「残ったこと」は「課題」にしたいと思います。 -「問題を一つ」選択しよう。 -その問題に取り組んで,どういうことに到達したのか,その様子を,wordに記述しよう。 -「図」はきっと不可欠で,wordの中にもコピペしてはりつけよう。 -もちろん,見つけたことの「証明」もきっと必要。 -証明はwordの中でキーボード等で書いてもいいし,それは面倒と思ったら,紙に書いたものを写して,その画像をはりつけてもいい。 -少なくとも,出発点から終着点までのストーリーがわかるようにしたい。 -この課題に関しては,wordのファイルをまなびネットにuploadして提出というスタイルになります。 -つまり,他の方のものをみることはできません。 **3.2 課題(2) - 「いろいろな場合を調べる価値がありそうな問題」を一つ見つけてフォーラムに投稿してください。 -- 問題文 -- 出典(教科書,問題集,書籍等....あるいは,自作でもいい) **3.3 課題(3)=「今日の授業の感想」 -これはいつもの通りです。 **3.4 次回は,「作図」を行います。 - **備考:今回は,授業ビデオ課題は「ありません」