作図の手引き(Geometric Constructorマニュアル Vol.2):飯島康之
[「作図の手引き」目次]

3.点の動きの制限


3.1 「点の動きの制限」とは

標準的な作図によって作図した図形は,変形することができる。変形では,キーボード あるいはマウスを使えるが,それぞれ,次のような特徴がある。
  キーボード:上下左右の方向に一定は幅ずつ移動する。
       上下左右以外の方向に「そのまま」進むことはできない。
       コンピュータのCPUの速度がそのまま反映される。
 マウス  :マウスを動かしたところに移動するので,「大体」思ったところに移動で
       きる。
       その移動は「アバウト」であって,精確なものではない。また,目をかな
       り使う。
       コンピュータのCPUが遅い場合には,「たまに描く」ようになるだけで
       その速度は図形の移動速度には関係ない。
 このような動かし方は,いわば「フリー」な動かし方だが,これら不便なときもある。
 例えば,ΔABC の面積が不変であるように変形したい場合, A をBCに平行に動かす必要 がある。

 (1)BC が水平あるいは鉛直の場合
キーボードを使うと,「上下」あるいは「左右」が目的の動かし方となるので,非常に 簡単である。しかし,マウスの場合,ピッタリ上下, 左右に動かすことはほとんど不可能 に近い。「大体」の様子を知りたいときはこれでいいが,「ぴったり」させたい場合には ,工夫がいる。

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.1 キーボードによる移動     図−3.2 マウスによる移動

(2)BC が斜めの場合
キーボードを使うと,直接斜めの動きができないので,いくつか右に動いて上に上がる というような不自然な動きしかできない。マウスの場合は上下, 左右のときとほぼ同様の 操作感である。やはり「大体」の様子を知りたいときはこれでいいが,「ぴったり」させ たい場合には,工夫がいる。

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.3 キーボードによる移動     図−3.4 マウスによる移動

(3) 円上を動きたい場合
たとえば円周角の定理のように,円上を動きたい場合は,キーボードでの使いにくさは とても顕著になる。マウスの方がましではあるが,これも角度などを計測しているときに は,誤差がとても大きくなってしまう。

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.5 キーボードによる移動     図−3.6 マウスによる移動
 授業での利用を考えた場合,「推測」のために使う場合は,このような使い方でほぼ妥 当であると言えるが,「検証」のために使う場合は,不適切である。
そこで,これらの問題を解消するために,Geometric Constructor では,指定した直線 や円などの上のみを動かすように,点の動きを制限することができる。たとえば,上記の 3例の場合, 次のような動きとなる。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.7 水平なBC                 図−3.8 斜めのBC
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.9 円上 (キーボード)        図−3.10円上 (マウス)
なお,それぞれの線・円上に動きを制限した場合は,
  ・キーボードの場合は,その上の等速度運動
  ・マウスの場合は,クリックした位置に一番近い場所への移動
というような動きをする。 (上図参照)

3.2 基本的な考え方と作図方法 −事前に準備−

このような作図をするためには,基本的には,点Aを決める前に,それがのる直線ある いは円を作図し,その上の点として,点Aを指定しなければならない。
そのための基本的な作図の流れは,次のようなものになる。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.11完成予定図               図−3.12点Aの前に,それがのる直線が必要
ここで,直線はBCに平行に引きたいが,BCのみでは決まらない。
 何らかの点Xを予め決め, Xを通ってBCに平行に直線を決める必要がある。
 そのため,次のような手順となる。
  ・B,Cを取る。
  ・BCを結ぶ。                   −+順序はどちらが先でも
  ・BCの外に点Xを取る。              −+いい。
  ・Xを通りBCに平行な直線を引く。
  ・「点」→「新しい点(図形上)」→「直線」→..
   によるAの決定
  ・AB,ACを結ぶ。
(ここでの点の名前は,完成予定図での名前等を元にしている。作図を最初に行うときに は,自動的にA,B,Cが付けられるので,上記の順番にはならない。これらの不具合は ,必要があれば,後で編集機能で修正すればいい。)
 これらの流れを追ってみると,次のようになる。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.13 2点を取る。            図−3.14 2点を結ぶ

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.15 外に点を取る。          図−3.16 平行線を引く。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.17 平行線上に点を取る。    図−3.18 三角形を作る。

3.3 「後から」修正するための方法と原則

 しかし,作図をするときは,多くの場合,何らかの問題について取り組んでいるときで あり,初めからそのような動きを予定しているときばかりとは限らない。その度に,最初 から作図をしなおすのでは,面倒である。
 多くの場合,「後から」修正することも可能である。例えば,上記の例では,次のよう な手順を取ることができる。
 ・ΔABCを作る。
 ・適当に点Dを取る。
 ・Dを通りBCに平行な直線を作る。
 ・「編集」の「点の束縛」で点Aを選択し,「直線」を選び,上記の直線を選択する。
  その上で位置を決定する。
 最後のメニュー操作の部分の動きを追うと,次のようになる。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.19 編集メニュー選択        図−3.20 「点の束縛条件」

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.21 点を指定                図−3.22 束縛条件を選択

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

 図−3.23 線 (円) などを選択      図−3.24 次へ (不要ならばEsc)

 ところで,この操作をするときに,「どの対象を選択してもいいわけではない」。
 たとえば,ΔABCの点Aを「AB」の上に制限してみたとしよう。

元のAの位置 → ABが決まる → その上のAの位置 → ABが変更

というような,堂々巡りとなってしまう。基本的に,このような選択をすると,図が異常 になってしまう。(事前にそれを感知して,選べないようにできるといいのだが,このソ フトではそこまで面倒を見ていない。)
 どのようにして,それを事前に判断したらよいだろうか。基本的な原則は次のように考 えたらいい。
 まず,それぞれの点・直線・円・変数の間の「依存関係」を考えてみる。たとえば,三 角形ABCの場合には,

  点 A   B   C   (それぞれが独立変数)
    |   ||  |
    ++−−+++−+
     |    |
     AB   BC   などとなっている。(CAは省略)
たとえば,外心を作図する場合は,さらにABを元にして,垂直二等分線ができ,それら から,外心ができる。たとえば,外心はA,B,Cの関数である。
 逆に,たとえば,線分BCは,Aとは無関係である。このように,従属関係において, 無関係な対象の上に制限することは問題なく可能である。
 そうでない場合,つまり自分自身によって影響を受けるような対象の上に自分を置くこ とは,ほとんどの場合,トラブルが生じると思っていい。

 3.4 練習問題

 次のような目的の図を作れ。点をどのように束縛するといいか。
(1) 等積変形
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

  図−3.25A               図−3.25B

(2) 円周角
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

  図−3.26A               図−3.26B

(3) 線分AB上に二つの正方形      (4) 三平方の定理
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

  図−3.27                              図−3.28

(5) 円上の点と円外の点との中点の軌跡 (6) 2円の上の点の中点の軌跡
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

  図−3.29                            図−3.30

(7) 三角形の2辺に接する円      (8) 2点を通る円
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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  図−3.31                            図−3.32

[「作図の手引き」目次]