作図の手引き(Geometric Constructorマニュアル Vol.2):飯島康之
[「作図の手引き」目次]

8.軌跡によるグラフの描画


8.1 関数を調べる手段としてのGeometric Constructor

作図ツールは「図形」だけとお感じの方もいらっしゃるかもしれない。しかし,測定機 能等を使うと,関数を調べるのに適した場面も少なくない。
そのような使い方を考える場合には,

「完全」でない方が教育的に適している場合が多い

ことに注意してみよう。

 たとえば,次の問題を考えてみよう。
問題 右図のような四角形ABCDがあり+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
その辺上を動点Pが毎秒1cmの速さで,B|                   |
→C→D→Aの順に動く。このとき,ΔP|                   |
ABの面積をSとすると,Sの変化の様子|                   |
をグラフに表せ。           |                   |
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                   +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 この問題に対して,「ボタン一つを押せば,グラフを描画してくれるソフト」というの は,どの程度効果的だろうか。「正解を確かめる」程度の価値しかないと思う。では,作 図ツールをつかうとどうなるだろう。まずは,上図のような図を作り,点Pを作ることに なる。

折れ線上に制限することはできないではないか

と問題点を指摘される方もいらっしゃるかもしれない。確かにそうだ。そして,場合によ っては,このことは致命傷にもなりえます。しかし,BC,CD,DAを縦横にしておく ならば,キーボードの矢印キーを押すことで,線分上の点を取ることができる。そして, 「グラフ用紙に記録せよ」と指示を出せば,その様子は,関数として記録することができ る。こういうときには,

コンピュータの結果ですべてを知ろうというのではなく,概略を知りたい

という目的で行う場合がほとんどなので,「概略」を知るのに,最も適切な方法が必要な のである。そのためには,何も「きっちり線分上」である必要はなく,「動きを制限」す ることの方がむしろ不適切であり,適当に矢印キーを押して,それぞれの場合を「プロッ ト」し,関数関係を予想する方が意味があると言える。


8.2 大きさを視覚化する

 また,「数値で観察」することが,面倒臭いように感じる場合もある。そういう場合に は,変化を具体的に視覚化してとらえることによって, かなり改善する余地が生まる。た とえば,「中心と半径」によって円を扱う場合のことを考えてみよう。
 円以外にも,棒グラフのようなものなど,いろいろ作れますが,円が一番簡単だ。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

8.3 グラフとして表現する

 たとえば,次の問題を考えてみよう。
問題
 右の図で,PA+PBが最小になる位置+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
を求めなさい。            |                   |
 これを解くには,普通は,よくある例の|                   |
方法が考えるわけだが,この方法では,最|                   |
小値の位置しか分からない。それを,「関|                   |
数のグラフ」の形で知るには,たとえば,|                   |
以下のような方法がある。       |                   |
                   |                   |
                   +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 数値のみ               円で表示
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|                  |                   |
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 グラフ化               グラフ化(軌跡として)

8.4 練習問題

(1) 8.3 の問題で,2乗の和が最小になる場所を探してみよう。
 (満足のいく「答」がある。)
(2) 8.3 の問題で,「直線」を「円」に変えてみよう。
   (大体の場所はコンピュータで分かるが,数学的にきちんと処理する方法を私は知らな
い。逆に言えば,そのような,「どうなるか分からない」場合について,実験的に結果を
求め, それを元に推論を進めるようなときにはかなり有力である。)

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