作図の手引き(Geometric Constructorマニュアル Vol.2):飯島康之
[「作図の手引き」目次]

10.複素数平面上の関数としての作図


10.1 平面は複素数

  これは,前提のようなことだが,特に中学校の先生方にとっては,普段接していない 考え方なので,改めてここに書いておく。つまり,(x,y) という点を,x + y i という複 素数と対応させれば,平面と複素数の世界として見ることができる。
 Geometric Constructor は,平面図形を扱っていますが,特にその中の「点」に注目す れば,それは,「複素数」そのものでもあるわけで,必ずしも「平面幾何」あるいは,ユ ークリッド的な幾何に限定されるわけではないことが分かるだろう。

10.2 少し「ズーム」して「保持」しておくと便利

 また,複素数を扱う場合には,単位円の回りでいろいろな変化が起こることが多いが, Geometric Constructor のデフォルトでは,少し細かすぎる。複素数を扱う場合には,「 ズーム」ボタンを2回程度押し,「保持」のために「/」キーを押すと便利である。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
「ズーム」               「/」で保持
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
「標準」に戻る

10.3 「和」を調べる

 「和」はベクトルとしての和を調べるだけのことだから,あまり面白くはないかもしれ ない。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

10.4 「積」を調べる

 次の図では,A,B に対して,A*B が作図+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
されているわけだが,たとえば,    |                   |
(1)Aを実軸上を動かすと,A*B はどういう|                   |
  動きをするか。          |                   |
(2)Aを虚軸上を動かすと,A*B はどういう|                   |
  動きをするか。          |                   |
(3)Aを適当な直線上を動かすと...    |                   |
(4)Aを円上を動かすと...        |                   |
というような問いを考えることができる。+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

10.5「逆数 1/Z」を調べる

 次の図では,z に対して,1/z を作図し+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
ている。さて,            |                   |
(1) z を直線上を動かしたとき,1/z の軌|                   |
跡はどうなるだろう。         |                   |
(2) z を円上を動かしたとき,1/z の軌跡|                   |
はどうなるだろう。          |                   |
 というような問いが作れる。      |                   |
                   |                   |
                   +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

10.6 複素数の関数(多項式)の性質を調べる

(1) 素朴な疑問
 たとえば,2次方程式

2 +x+1=0

を考えてみよう。

この「解はあるだろうか」。

 実数の範囲を考えれば,「ない」。実際,グラフを描いてみると,

y=(x+1/2)2 + 3/4

だから,大体, 次のようなグラフになる。x 軸との交点がないのだから,解がないという のは,とても妥当なように思える。
 さて,解の公式を使って,

               −1±√(1−4)
             x=−−−−−−−−−
                  2
を考えると,ルートの中で負だったら,そこをiを使えばいいじゃないという雰囲気もす るし,実際,高校では,それが妥当なものとして扱われるわけだが,さて,

「その解はどこにあるの」

という素朴な疑問が湧かないだろうか。
 あるいは,

任意の多項式について,その解を実験的に求める方法はないのだろうか

と思わないだろうか。
 実際,関数のグラフが納得いく人にとっては,形式的に定義することや,そう定義する と解になることは納得できても,何か合点がいかないなあと,不思議に思えるはずだと思 うのだが。

(2) 多項式を「平面から平面への対応」として「作図」する
 さて,

2 +x+1=0

について考えるために,

f(z)=z2 +z+1
を考えることにする。Geometric Constructor を使うには,
z     :独立な点
z2     :「巾」によって作れる点
z2 +z  :z2 とzの和
1     :定数(点)
z2 +z+1:(z2 +z)と1の和
と考えれば,作図をすることができる。対応が明確に分かるようにするためには,他の点 は「消して」しまう方がいいと思う。

(3) zを適当に動かしてみる。
 まずは,zを適当に動かしてみよう。動かす点と動く点と二つある。一方は定義域にあ り,一方は値域にあると思おう。実数値関数の場合には,


      |
      |            :     P(x,f(x))
      |                  の動きを観察
 −−−−−+−−−−−−定義域
      |
      |
     値域
ということになるが,複素数でこれをするには4次元が必要になるため,
      |                     |
      |                     |
      |  ・z                 |
      |                     |
 −−−−−+−−−−−−      →   −−−−−+−−−−−−
      |                     |  ×f(z)
      |                     |
      |                     |
      |                     |
という二つを並列したものを,更に重ねていると思おう。
+−−−−−−−−−−−−−−−観察結果−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

(4) z を実軸上を動かしてみよう
 zを実数軸の上を動かしてみると,普通の実数値関数をこのような表しかたで表すとど うなるかを観察することができる。f(z)は右の方から原点に近づくけれども,また戻 ってしまうことが観察できると思う。

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
                  観察結果

(5) Zを虚数軸上を動かしてみると
 次に,虚数軸を上を動かしてみよう。また,実数軸に平行に動かしたり,虚数軸に平行 に動かしてみたりして,その軌跡を観察してみよう。

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
                  観察結果
(6) 単位円上を動かしてみると
 さらに興味深いのは,単位円の上を動かした場合である。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
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+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
                  観察結果

(7) 他の多項式についても,同様にして,実験的にいろいろと調べられる。
 こんな具合に, いろいろな多項式に関して,その値を実験的に調べることが可能である 。


10.7 練習問題

(1) f(z)=z2 +z +1 のように,係数が実数の他の多項式について,

(2) f(z)=z2 +z +1を原点を中心とする単位円以外の円上で動かし,その軌跡 を調べてみよう。

(3) 3次式などについて,解と像との関係を調べてみると,どうなるか。


[「作図の手引き」目次]