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デモンストレーション

- 作図ツールを使うときの最も基本的な教授方略 -


概要


1 作図ツールにおける一斉指導の重要性

コンピュータを使った授業と言うと,

さあ,コンピュータ室へ行って一人一台使わせよう

ということになるのが普通かもしれません。確かにそういうソフトもあるでしょう。CAIや音楽,美術系のようなツールソフトはそうでしょう。それらは,個々の生徒に「合わせる」ことや,個々の生徒の「表現」を行うことが主目的ですから,生徒自身に操作させることが出発点だからです。

 作図ツールも確かに,生徒の個性が出てきますが,それは個性的な図を作るかどうかということではありません。図そのものや変形そのものは,もっと客観的な存在です。客観的で普遍的に思える図を,どう解釈するか,次に何をしたいかという部分に個性が出てきます。そこに大きな違いがあるわけです。そのため,作図ツールの利用では,

一斉指導のノウハウが重要

になるわけです。


2 まずは,動く図を使って解説する

これまでは,黒板等で,動かない図を使って説明することがほとんどでした。動く図を使うためには,独自の教具を使って説明しなければいけませんでした。個々の教材ごとに教具を作るのは大変でした。そういう苦労を軽減してくれるのが作図ツールと思ってみましょう。すると,

動くOHP

のような教具としての使い方をすることになります。

 この技能は,指導技術として,とても大切です。というのも,

  1. 普通教室に1台を持ち込み,普段の授業形態の中で試験的に使うための手段
  2. 問題提示や議論, そしてまとめで重要かつ不可欠な手段
  3. ソフトの「操作」や「探究の進め方」を効果的に提示し,学習させるための手段
  4. 「生徒の発表」のための見本
など,様々なところで役立つからです。


3 練習問題

 次の図は,教科書等で,「動かして解説する」のに適した素材として掲げられているものです。

普段の提示の仕方を思い浮かべましょう。
そして,「動く図」を使って「内容の解説」をしてみましょう。
 なお,それぞれの冒頭は,ファイル名です。「例」を選択すると,これらの一覧が出てきます。

(1) 「中点連結」(啓林館,中2,p.164)
(2) 「4角中点」(啓林館,中2,p.165)
(3) 「円周角」 (啓林館,中3,p.106)
(4) 「2辺正3角」(啓林館,中2,p.127)
(5) 「2等平2線」
(6) 「2円2線」
(7) 「2円1線」
(8) 「接弦円周」


4 デモンストレーションのために必要な機器

このようなデモンストレーションは少なくとも算数・数学科での授業では必要不可欠であるにもかかわらず,必ずしもそれを配慮したコンピュータ室の構成になっていない場合が少なくありません。恥ずかしいことに,この講座で使っている部屋 (教育工学センター) も,配慮がされていません。それらの事情は,学校ごとによって異なると思いますが,デモンストレーションを行うためには,次のような機器 (のいずれか) を用意することで,何とかなると思います。

(1) 液晶プロジェクタとホワイトボード

これが現在,もっとも優れています。ただし,高価です。コンピュータ室はもちろん,普通教室で使うにもかなり効果的です。同等の機能の機器が低価格化するといいのですけど。
   エプソン:マルチメディア・プロジェクター ELP-3000 \898,000
本学でも,大学にはありません。附属名古屋中学校にあるだけです。機会がありましたら,一度お借りして,実演したいと思います。
 専用のスクリーン等を使うと,もっと見やすくなりますが,ホワイトボードに写すと,「そこに書き込める」という利点があります。

(2) 大画面のディスプレィ

コンピュータ用のディスプレィとして,どの程度の大きさのものがどの程度の価格であるのか詳しくありませんが,「コンピュータ入力対応のテレビ」であれば,640 ×480 までの出力は可能なので,Geometric Constructor などではこれで十分です。 (Windows の高い解像度のものは無理)
重いので,多くの場合は,固定することになるでしょう。

(3) テレビ+スキャンコンバータ

 コンピュータ用のディスプレィはなくても,多少大きめのテレビなら,どの学校でもあるものです。コンピュータのRGB出力をそのままつなぐことはできませんが,スキャンコンバータという機器を介すと,解像度は落ちますが,テレビで見ることができるようになります。コンバータは数年前でも5万程度で変えました。

というのが,一つの有力な手だと思います。

(4) 液晶ディスプレィ+メタハラOHP

 初期(90年頃) はこの方法しかありませんでした。今でも有効な方法ではありますが,少なくとも,OHPが明るくないと現実的でありません。(部屋を暗くすると手元が見えなくなる)また,意外な問題点は,ファンの音です。教師が大きな声を出せないといけないので,喉が痛くなります。また,カラーのディスプレィは綺麗ですが,高価なことと,画面が暗くなることが問題点です。

(5) 液晶テレビ+スキャンコンバータ

 数学教室で94年末に,この目的で購入したのは,液晶テレビでした。(4) とほぼ同じ性能で,静かであり,価格もまあまあということで選択しました。工学センターも同様の選択をしました。しかし,そのすぐ後に(1) の機器が発売され,かなり性能が向上しているため,くやしがったものです。

(6) テレビ+MARTY

 これが最も安価な方法です。最近は,コンピュータの激しい低価格化により,この手が適しているのか,それとも古いコンピュータを「再利用」する方がいいのか分かりませんが,いずれにしても,最も安価な方法です。TOWNSやFMR50など,富士通の機器がコンピュータ室に入っている学校では,今でも十分使いやすい候補となると思います。MARTYの機能は,9801RX程度,つまり80286のCPU程度と思ったら妥当です。定価が6万6千円程度。高くても5万程度です。大須や通信販売の中古品は3万程度です。コンピュータとして使えなくなれば,TVを使ったCDプレーヤーとして利用する手も残っています。

 私自身は,ノートパソコンの方が動きは速いので,もちろんデータ作成はノートパソコンで行いますが,大学の授業(数学のコンピュータ室)等で使うときは,

等から,MARTYを使うことが今でも多いのが現実です。速い動きでないと困るときは,ノートパソコンや学生が使う98を接続することもありますが。