*0.はじめに **0.0 撮影と共有をご了解ください - 1年のときに私の授業を受講した方は「前と一緒」です。 - この授業のビデオを撮影・編集し,「みなさんの学びのためにオンラインで提供」したいと思います。そのための撮影をご了承ください。 - 今回,次の目的があります。 -- 「みなさん自身が,今日の課題などを取り組むにあたって,ビデオがある方がいい」 -- 今回,やむをえない事情で欠席を予定している学生もいて,その方の「学びの機会」もサポートしたい - 過去同様に,3台のカメラ(後ろからの全景,プロジェクタ,前からの全景)で撮影します。 -- それぞれの映像は,当日内に提供できると思いますが,編集した映像を提供できるのは,翌週月曜日あたりになるかもしれません。 **0.1 みなさんにとっての「数学の魅力」とは - 多少聞きますが,続きは「フォーラム」で **0.2 みなさんの数学の魅力を引き立てる道具としてICTを使ったことはありますか? - もしかすると,次のような感じでは? -- 数学にICTを使うのはずるい。あるいは,本当の力ではない。実際,入試では使えないではないか。 -- 数学なんて学び必要はない。ICTがすべて代わりをしてくれる。 -- もともと数学の点数がいいから選んだだけ。魅力なんて感じていない。 - それを変えるきっかけになれば幸いです。 **0.3 みなさんにとって,「幾何」の魅力って,何ですか? - もしかすると,次のような感じでは? -- 穴埋めの証明問題ね。だって,高校入試マークシートでしょ。それしか出ない。 -- 中学でちょっと扱うけど,それでおしまいでしょ。数Aにあるけど,入試に出ない。 -- 数学には式や計算が不可欠で,幾何は時代遅れ。いらない。 - それを変えるきっかけになれば幸いです。 **0.4 図形を動かすソフト,授業で使ったことありますか? - 石川先生が使ったGeoGebra? -- たしかにそれが,今世界的には元気なフリーソフトです。 -- もともと 1990年代からいろいろなソフトがあって, そのころから世界の数学教育研究では定番の分野の一つです。 -- そして,附属名古屋中をはじめとして,かなり先進的な研究授業をしてきたんだけど,みなさんは授業で接することがなかったのかもしれません。 -- CIIの授業では,もう30年も前からみんな学んで卒業していったけど。 **0.5 この4コマで経験してほしいこと - ICTをうまく使うことで,「みなさん個人の数学(的活動)」が活性化される(可能性がある) - ICTをうまく使うことで,「集団としてのみなさんの学び」が活性化される(可能性がある) - ICTは脇役であって,主役ではない。主役は「人」であり,「数学」であって,「うまい使い方」を考えることが重要。 - ICTを使うことで活性化される数学は,教科書で構成されている数学とはちょっと違った世界。 - みなさんが教師になるときに担当する子どもたちは,「ICTを使いこなしながら仕事や生活をしていく」世代であって,そこから逆算すると,未来の数学教育では今と違った学びも想定できるのかもしれない。 -- たとえば,正解が決まっている問題に対して,速く能率的に正解を導くことが求められるとは限らない -- たとえば,「夢中になれること」が大切だったりする。 -- たとえば,「集団の中で貢献できること」が大切だったりする。 - 「幾何」って,たしかにある。 -- それは代数や解析と比較して,複雑で,直感的でもあり,論理的でもあり,実験もあったり,想像もあったり,いわば半具体物のような,純粋に数学っぽくもなくて,不思議な世界。 -- 三角形の合同なんかもあるけど,その先の現代的な世界もあって,代数や解析や確率などとも融合して新しい世界を構築していそうな世界 - 数学って,おもしろい。 **0.6 飯島担当部分での授業のスタンス - 「単位のためにしなけれぱならないこと」は明確にしておく。石川先生が示した割り当ての点数で,それなりの点数を確保するためのハードルはそこそこに。 - 「授業の中」では,「体験すること」を重視する。 - 「さらに深く学びたい」人に対して,リソースや学びの機会は提供するし,そこでの学びへのレスポンスや評価はするが,それは「自由意志」であって,必須ではない。 - 「提案」や「発表」を重視したいが,時間的な制約もあるので,「ネット上の活動や議論」にゆだねる部分もある。 - 授業ビデオは,「自分が生徒目線で体験したもの」は,分かりやすさがかなり違う。 -- ここで模擬授業として扱ったものに対して,(「見なければいけない」位置づけにはしないが)附属名古屋中での授業ビデオをオンラインで提供する。 **0.7 この授業での「評価」からの逆算 - 最終的に,「授業コンセプトの解説動画」(5分程度)をzoomで画面共有しながら作り,提出し,互いにコメントしあってほしい。 -- そのサンプルは,「今日の模擬授業を踏まえて提示します」 - そこでは,GCなど(他のソフトを自発的に使ってもかまいません)を使って操作する様子を画面共有しながら,「こういう流れの授業にしたい」というのを語る動画です。 -- 過去は指導案作成を最終課題にしていましたが,その前段階として授業コンセプト動画を2回つくって協議していました。手応え,けっこうよかったです。作品つくりみたいで面白いし。 - そこで利用するためのGCのコンテンツとして標準的なものは提供し,「ほしい」ものは私の方でつくることもアリです。 -- 過去はもちろん「それをつくれるスキルの習得」も授業の中に含んでいました。今回,そこは求めませんが,そういう力をつけたい方は,web上に資料はあります。また,GCでなくても,GeoGebraなどでつくれるなら,それを使うのもokです。 -- ただし,YouTubeなどであるような「ただ解説するだけの動画」はやめましょう。授業での活動の主役は生徒であり,生徒にどういう活動をさせたいかが伝わってくるような動画を想定しています。 - そういう「図形に関して生徒が活動する」ような事例を,今週から4種類提供するつもりです。 -- そういうコンセプトの中の一つを選択し,「似たようなことをする」のが標準ですけど,自分なりに独自の「活動」に取り組んでいただくのもアリです。(重要なのは,そこに,「生徒の活動」は想定されているのか?ということ。) - そういうものをつくれるためには,「分析できること」がきっと必要で,毎回の課題として,「今日の取り組みについて,生徒目線,教師目線で分析すること」をフォーラムで書き込むことを課題とします。(共有することを目的ともしています) - 素材を探してくるきたら(任意),該当するGCのコンテンツがつくれそうかどうか,つくれるならつくっておくというのは,私の方で対処します。 - zoomをインストールして動画作成をする練習は,きっとしておかないといけないので,3週目あたりにも取り組んでおくことにしましょう。 - その他「任意」という課題に関して,取り組んでくれたものに関しては,「対応」をする予定です。 *1. 「道具」あるいは「環境」で,数学的活動は変わりうる。 -ここは,授業の中では詳しくは触れません。 **1.1 数学と道具 - もちろん,純粋な意味での「数学」は道具に依存する存在ではない。 - でも,実は算数でも数学でも考えてみると,さまざまな「道具」を使いこなし,生み出している文化でもある。 - 「表・式・グラフ」は,算数での「関数の考え」のための3点セット - 図形指導でも,紙をはじめ,いろいろな教具を使うし,その使い方や意図もさまざまだ。 - 試験のときに持ち込み可能なものを考えると,「何もなくてもできる」のが数学の特徴のようにも思えるが,「図をかく」ことは問題解決の基本の一つ。 - 「定規とコンパス」には数学的には特別な意味があるが,中学校・高校ではそれをきちんと指導しているとはかぎらない。 **1.2 図形指導で使う道具 ***1.2.1 紙 -フリーハンド - 「折る」「重ねる」「切る」など,物理的な意味での操作 -「定規とコンパス」による作図 ***1.2.2 現実(実物) - 現実の空間に対するモデル化としての幾何を考えると,現実の中にさまざまな素材がある - モノが上手に機能するために,図形的な仕組みが使われていることも多々ある。 ***1.2.3 動的幾何ソフト(作図ツール) - 数学的な意味で作図・測定等が可能で,「動かして調べることができる」 - 現行の啓林館の教科書ではGC/html5による図(へのリンク)が使われている - そもそも,このジャンルのソフトは,1990年代から存在し,世界的には当たり前の存在 - これまでも多くのソフトが存在してきた。(今元気なのは,GeoGebra) -- 創成期のソフトは,cabri, Geometer's SkechPad など商用ソフトが中心。GCは創成期の1989年からのフリーソフト。 **** King(1997)は,動的幾何ソフトは,次のような利点があると述べている。 - 正確な作図 - 視覚化(visualization) - 探究と発見 - 証明 - 変換 - 軌跡 - シミュレーション - マイクロワールド(パパートの意味で) --@@https://www.amazon.co.jp/Geometry-Turned-Software-Mathematical-Association/dp/0883850990,King,J.他 (ed) , Geometry turned on - dynamic software in learning, teaching, and research, MAA, 1997 **1.5 その他の汎用の数学用ソフト - 関数グラフソフト (日本で昔から高校でよく使われてきたのはGrapes, 世界的にはGeoGebra, Desmosなどさまざまなものがある) - 表計算ソフト (Excelが中心だが,...) - 数式処理 (mathematicaが有名だが,そのサブセットとして,web上でアクセスできる WolframAlphaがお勧め) - GeoGebraは,dynamic mathematicsを標榜していて,複数のインターフェイスを統合している。 - 広い意味ではプログラミングも該当していて,特にPythonは,さまざまなライブラリがある。 **1.6 さらに広く考えるなら - STEM教育,STEAM教育的な文脈で考えると,現実の多くのデータをセンサ等を介して取得し,リアルタイムで処理する機器を使って探究を進めるようなものや,制御や表現を行うようなシステムもある。 - それらは今までの数学教育とはかなり違って意味で,未来指向の数学の使い方を提供してくれる。 - それらによって,新しい「総合的な探究」の世界は広がるのだが,そこでの「数学の学び」そのものをどう位置づけるのかは,数学教育の観点からは簡単ではない。 - しかし,将来的な課題としては,とても魅力的な領域だ。数学というよりも,数理科学指向といえるだろう。多くの生徒の未来から逆算すると,そういう数学の方が適している。(その中にはデータサイエンスなども含まれる。) - 逆にいえば,そういう世界の探究や学びを考える上で,「ICTなし」はありえない。 *2.「問題解決」とは - 「数学は, ペーパーテストで, 限られた時間で正しい答えをかくためのやり方を学ぶ教科」なのか? **2.1 ペーパーテストでの「問題解決」? - 事前に,「正解」あるいは「模範解答」が一つだけ決まっている。 - 公平・公正のため,「きめられた時間の中で,きめられた道具(知識・道具)を使って,独力で正解を見つける」こと - 普通,数問提示されるから,「解けそうな問題」や「むずかしい問題」を見極め,無駄なことに時間を浪費しないこと **2.2 簡単に答えを出すための道具がICTと思うと, ... - 「ボタンを押したら答えを出す」のが, コンピュータ/ソフト だとしたら, ...数学なんて学ぶ必要ないね。 - だから,カンニングのような道具としてのICTは使わない...? **2.3 例の「グルグルの図」など - 数学教育で,よく出てくる,あの図は,何を意味している? - そもそも,みなさんにとっての「いい数学的体験」って,何? - もう少しおもしろい「数学の世界」あるんじゃないか? - そういうことを可能にしてくれる道具としてのICTのあり方を考えたいが、これまでの日本の数学教育は,そういう感じではなかったし,今後もそういう路線は続くのかもしれない。 -- 実際,GIGAスクール構想での「一人一台」は,個別最適化の学びや協働学習のための学びという位置づけが強く,前者のためには習得型の学びを強化するためのシステムが,後者のためには,ロイロノートなどの汎用システムが強調されているように感じる。 -- 数学教育での手応えとして,「旧来的な学力での学び」を強化するための仕組みという印象が強く,「新しい学びの可能性」になっていないように感じる。 **2.4 この授業の中で考えたいキーワード例 -「主体・対話的で深い学び」 -「わかりやすい授業」 -「知識・技能」 -「思考力・表現力・判断力」 -「個に応じる指導」 -「言語活動」 -「観察・実験」 -「レポート作成」 -「問題の発見」 *3. この授業の中で実感してほしいこととその評価 -0.7をもう少しきちんと記述してみる --卒業研究などで,この手のスタンスの取り組みを深めてみたい方を想定して。 **3.1 自分自身の(模擬授業の中で生徒の立場で体験する)数学的探究の様子を認識し,記述,表現する -「参加」する, そして自分の取り組みを振り返り,分析する(必須) -- まなびネットのフォーラムでの書き込み **3.2 模擬授業や授業ビデオの中での教師の意図・振る舞いや生徒集団の様子を観察・記述・分析する - 自分が参加した模擬授業を,教師目線で分析する。(必須) - その後オンラインでアクセス可能な授業ビデオの試聴し,分析する(任意) -- まなびネットのフォーラムでの書き込み **3.3 教材研究をして,授業のプランを考え,表現する -時間があると,教材選択・教材研究・授業プランの立案・動画作成・指導案作成・発表(模擬授業)・修正等のプロセスを踏むけれど, -今回は,「動画作成」を案として考えたい -今日の模擬授業に関する,「動画」や「指導案」のサンプルは,授業後に提供。 -- 同じような感覚での「動画」が全体を通した課題と認識してくれたらいい。 -- また,GC/htm5のweb上には,さまざまな動画があるので,参考にしてくれたらいい。 -- 指導案は,今回は課題にしない。去年までは,この指導案をサンプルとし,自分なりのものを仕上げることを課題にしていた。 -素材は,ある程度与えたものを使うことを想定している。 -しかし,「素材の候補」を見つけることは任意の課題としてみたい。 -- 提供された素材を,GCでコンテンツ化できるものは次週までにしておし,適切でないものは,その旨のコメント等をしておく予定。 -- (これまでは,自分で作図できることも,授業の中で取り組んでいた。) -- 自分で作図できる力をつけたい人は,GC/html5のサイトの中に,解説動画があるので参考に。 -- 自分で選択した素材をもとに,授業プランを考えることは大歓迎。 **3.4 「集団としての学び」 - 学びは「個人」だけのものではない。それは「ここ」においても。 -- 授業を,全員で作り上げること。 -- 分析は,フォーラムの中で「共有」し,みなさんの考察・議論の素材にしてもらうこと。 -- 作成した「動画」の期限は,7/4あたりを想定しているが,提出されたものは,みなさんで共有可能にし,互いにコメントすることを一つの課題としておきたい。 *4.この授業のリソース **4.1 このwebやまなびネット - webは「これ」の他に,授業ビデオ配信なども - まなびネットは「議論(フォーラム)と「提出」 **4.2 書籍 - 飯島, 「ICTで変わる数学的探究」,明治図書,2021 --@@https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-324425-3,明治図書にて -- 必須ではありませんが,授業の背景にある全体像を把握するのに適しています。 -- 希望される方には,2割引にて提供します。(もちろん,他の手段で入手することも可能です。) **4.3 web(GC/html5) -@https://www.yiijima-gc.org/,https://www.yiijima-gc.org/ -- いろいろなことを包括的にまとめている途上。 -- 動画も豊富にあり,授業の補完的な意味もあります。 -@https://yiijima.sakura.ne.jp/iijima/,飯島研究室 -- 他の資料等も整備中 -- 「飯島研究室」で検索すれば,見つかります。 *5. 今回の模擬授業 **5.0 まなびネットでの「課題」 - 1.今日の模擬授業を「生徒目線」で振り返り,次の点についてコメントせよ。 -- (1) 「数学らしい活動」に自分が取り組めたと実感できたのは,どの場面で,どういう意味での数学的活動でしたか? -- (2) それを実感する上で,「道具の選択」(GC, 紙など)は,どういう意味で効果的でしたか? - 2.今日の模擬授業を「教師目線」で振り返り,次の点についてコメントせよ。 -- (1) 「普通の授業スタイルで取り組むのとはちょっと違う数学的活動」として,どんなものを実現したいという「意図」を感じましたか。 -- (2) それを実現するための「具体的な工夫や発言」として,どういうものを感じましたか(うまくいったかどうかは別として) -- (3) なるべく多くの人が貢献できたり,学び合いがうまれるための「具体的な工夫や発言」として,どういうものを感じましたか(うまくいったかどうかは別として) -- (4) ここはこう改善した方がいいと感じた点はどこでしたか? - 3.(任意) 「附属名古屋中の山中実践」のビデオで,実際の中学校の授業ビデオをみて,感じたことをまとめてください。 -- 授業後にオンラインにてアクセス可能にしておきます。(url等はまなびネットにて) - 4.(任意) 今日と同じような取り組みに適していると思う「問題」を見つけて書き込んでください。 -- 水曜日夜までに提出されたものに関しては,次週までに次の対応をしておきます。 --- GCでコンテンツをつくれるものは,つくっておき,使えるようにしておく。 --- 他のソフトが適切であったり,課題としてあまり適切ではないと思えるものに関しては,コメントをしておく。 **5.1 想定している活動 - 問題理解・明確化(状況から問題文へ), 具体的に取り組むべき問題への定式化, 観察,予想,アイデアの書き込み,検証,証明 - ICT(GC)と紙の適切な選択(使い分け) - 個人・グループ・全体の使い分け (この教室環境では指示はできないので,みなさんにゆだねるしかない。) **5.2 きっと,名中生向けより,少し発問をやさしくします。 - 流れの中での意思決定なので,やってみないと分かりませんが。 **5.3 初めて出会う問題でしょうけど - もちろん,教科書には出ていません。 - でも,山中先生の希望で,附属名古屋中学校で扱ってみました。 - 私が院生のとき,筑波大附属中の吉田先生は,その数年前に,7時間構成くらいの取り組みとして,かなり手応えのある授業実践ができたと実践論文を渡してくれました。 - 山中実践に関しては,論文化し,リポジトリに収録してあるので,後で紹介します。 *5.4 今後の「テーマ」-動的幾何ソフトを通して- - 「いろいろな場合を調べる」ということの意味 - 「図形を関数的に理解する」ということの意味 - 「問題を発展的に考える」ことや「問題を発見する」ということの意味 - (図形というよりも)「幾何」とは何だろう。 *6. 課題 - 学びネットのフォーラムとして,次のことを掲載しますから,次回までに書き込みをしてください。 -- 「生徒目線」(必須) -- 「教師目線」(必須) -- 「山中実践」(任意) --「今日のような実践のための問題」(任意) -- 今日のCIIの授業についての感想や今後への希望(任意) --- 希望をフォーラムに書きたくないけど伝えたい場合はメール(yiijima@auecc.aichi-edu.ac.jp)でもいい。