*0.はじめに **0.1 みなさんからの「問題」 - 有馬くん / モーザー数列の導出 -- 「導出」そのものがねらいだとしたら,たぶんGCだけでなく,他の動的幾何ソフトでも,あまり役に立ちません。 -- このことについては,「追記」で検討してみることにしましょう。 -- 逆に,「モーザー数列」に,どういう数学的活動の価値を見いだしたのか,というところが,いろいろな意味での「こどわりポイント」の出発点になると思います。 -- ただ,「まず候補を挙げてみる」ということが,とても価値があることで,一番に提案してくれたこと,「感謝」です。 - 柴田さん -- 教科書での「意図」がありますよね。そもそも。この図にはどういう特徴を感じるでしょう。 -- 計算結果を出すことにはGCは役立ちません。 -- 測定結果は示してくれますけど,「それをみてこたえをかくだけ」では,ただのカンニングになってしまいます。 -- 「いい使い方」とはどういうものでしょうね。 ****余談(1) -- みなさんからの「問題」が6/12時点までで二つだけというのは,ちょっとさびしいことですが,それは「任意」なので,批判をするつもりはありません。 --- 「しなければならないことだけすればいい」という価値観もあるでしょう。 --- 「しなければならないところで,高得点をとることに意味がある」という価値観もあるでしょう。 --- 「他の人とは違うところで何かを見つけ,それを提案する」という価値観もありえます。 -- みなさん「自身」がどれを選択するかは自由ですが,「世の中にはいろいろな価値観の人がいる」のも事実で,「しなければならないところで高得点をとる人がえらい」というのは,大学入試の共通テストまでしか通用しない価値観だということもわきまえておくこともきっと教育系の大学生としては重要です。 ****余談(2) --附属学校で公開授業や研究授業をするとき,ウチの大学生に声をかけても,現実には「来ませんでした」。 --きっと,「単位のために行かなければならないなら行くけど,そうでないなら行かない方が楽」という価値観なのでしょうね。 --逆に,名古屋市内の私学の学生が何人も来ていました。(名古屋中でも岡崎中でも) --彼らにとっては,「授業をみることができる貴重な機会」なのです。 --先輩である附属教員の方々がいろいろなことにチャレンジする様子に,後輩は価値を感じず,他大学の学生が価値を感じる。 --「マジョリティがそう」であることに問題は感じません。全員が来ても受容できません。でも,数人はいてもいいはずかなと思います。 --そういう機会に「自分の判断で価値を感じる」マイノリティが。 **0.2 zoomでの動画作成のノウハウ分かっておきたい -「最後」になって「焦る」のは避けたいので,今夏のレポートに,「zoomでの動画作成と提出」をいれておきたいと思います。 - 動画の「中身」に関しては,次のことを候補にしています。 -- (a)特に準備をしなくても「語れるはず」をデフォルトにしたい。→ 先週や今週の模擬授業の中で,「このプロセスが数学的」と感じた部分を解説する -- (b)模擬授業の練習という形でやりたい方には → たとえば,「円周角の定理」をどう扱いたいかを語る |#00003-0613-01|#00004-0613-02|#00005-0613-03| -それぞれ4つのページがあり,その中の一つあるいは複数を使ってかまいません。 -もちろん,上記では不満な方は,自分でつくってもかまいません。 --(c)自分が取り組んだ問題に関して,GCであっても,それ以外であってもかまわないので,その様子とその数学的価値について語る --(d)授業プランについて語る(最終的に提出するものの練習という感じ) --(e)授業ビデオ(名中の授業,ここでの授業)について語る -次の点は踏まえておきましょう。 -- 時間の目安は5分程度 -- 画面共有をする -- GCであれば,画面の中に書き込み等をしながら説明する(マーカーの利用,他のソフトでは同等の機能がなくてむずかしいかもしれない) -- できるだけ,自分の映像を含める(教室の前で,プロジェクタ等を使って授業をする練習という感じのコンセプト) -- 他のみなさんからのコメントを書いていただくので,「アピールする内容」をぜひ。 -- ファイル名は 学籍番号-名前-20250613.mp4 にて |zoomで動画を作成する様子|$pUBrCA507Sc| -なお,サインインをした経験がない方は,サインインが必要です。大学のメールアドレスで登録するといいと思います。 0.3 「みなさんの書き込み」と前回の振り返り - 「生徒目線」と「教師目線」での書き込みを拝見しました。 -- 非常に素朴な言い方でいえば,「みなさん,それなりに書いてくれている」。それぞれ,いいところをみてくれていると思う。 -- 「授業を受ける立場」であれば,きっとそれで問題ない。でも,「授業をする側」になるためには,「うまくいっているかどうか」を観察できなければいけません。目の前の様子を評価し,次に自分がとるべき行動の選択肢をいくつかもっていて,適切なタイミングで適切な行動を選択し,実行できないといけません。そのためには,「こういうところでこういうことが起こることが,こういうことなのだ」と,かなり具体的に記述できることが必要になってきます。 -- 今回そこまでの記述をそもそも求めているわけではありませんから,「かけていないね」と批判しているのではありません。「いい授業者になるため」には,そういうスキルを磨くことが重要ということを認識し,他の人の観察や発言を聞くようにしてください。特にベテランの授業者の方は,「何を見て,どう解釈し,どういう意思決定をしているのか」を理解させてもらうつもりで,授業をみるように視点を切り換える必要があります。 - 「比較」は効果的 -- 実践的なことは,「ここをちょっと変えたら」等のケースと「比較」しながら検討することが基本です。 - 「公立中学校ではむずかしい課題ではないか」という批判がありました。 -- そういう視点で観察し,批判をしてみることは,けっして否定しません。 -- ただ,今回,この素材の選択は,「みなさん向けの模擬授業」という基準であって,「標準的な授業」ではありません。教科書にある問題を公立中学校での標準的な方法でみなさんに対して模擬授業をしたとして...そこにみなさんがホンキになる数学的活動はありうるでしょうか。附属学校でも同様です。「相手に合わせてカスタマイズ」するのです。逆に,「相手に合わせてカスタマイズする」ことになれている先生であれば,たとえば普段附属にいても,公立中にいけば,「そこの生徒たちに合わせる」技量は持ち合わせているのが普通です。 -- そもそも,みなさんにとって,たとえば「九点円の定理」を紹介し,「証明に取り組んでください」と10分程度の時間をあげたとして,最後まで証明できた人は何人いるでしょう。最後まで取り組みたいと思った人は何人いるでしょう。きっとごく少数だと思います。でも,前回の模擬授業では,最後までそれなりにみなさんが参加してくれました。ということだけをみても,きっとそこには指導上の工夫等が「ある」はずなわけで,「そこに注目する」ことを心がけてください。そして,そういうノウハウの中で,公立中学校にも通用しそうなノウハウ。公立中学校なら適している素材等を見いだすようにしてください。 - 「証明問題」に取り組む上では,「紙」上での試行錯誤が基本 -- 証明問題として取り組む上で,「中点連結定理」と「円周角の定理の逆」の組み合わせくらいなので,「あ,そうか」という気づきの魅力は,この問題なら多くの人が体験できるはずと意図していました。 -- それができない方は,「初等幾何で補助線を追加したりしながら発見を楽しむ」というスキルが身についていないのかもしれません。 -- ここは,「GCは使わない方がいい」場所です。 -- あるいは,図に書き込みをしながら考える,発表するというので有効な場面です。 - 「取り組んでみたい」と思わせることと,「自分でもなんとかなりそう」と思わせる,そしてまた,「自分の問題」と思わせることが重要と思います。 - 同時に,解決のために必要な知識を活性化しておくことも,みなさんの場合には特に必要です。初等幾何なんて久しぶりですから。そのために,いくつかの工夫をしています。 -- 三角形の9点円って,「めずらしいこと」なのか? --- 3点なら,必ず円が決まる。それ以上では決まらない。4点だって「定理」のはずなのに,「9」もあるなんて「すごい」 --- というのを「解説」するのではなく,みなさんから引き出したい --- 4点って,具体的にはどんなのがある? →正方形や長方形はokだけど,ひし形や平行四辺形ではだめ→後での観察に不可欠 -- 「9点」って,どこ? --- 観察し,予想し,それをGCで確かめながら,問題を定式化していく(ここはGCがないと無理。ちなみに名中では扱っていないプロセス) -- 「証明する気にならないよね」という気持ちの共有 --- 「だって,9つもいっぺんに証明するなんて,なんて無茶なことを」を「共有」 -- 「戦略を練ろう」 --- とりあえず,4つから -- 隠れた「円に内接する四角形(あるいは長方形)」を見つける。 --- このとき,たまたま長方形にみえるばあいになっているケース(ガセネタ)もありうる。予想して,それが妥当かどうかを検証するために,GCを使う。(偶然,そういう事例を取り上げることができた。) - 想定していなかったけど,アドリブで対応した「問題解決を円滑に進めていくための言語活動等」 -- 「長方形」であることを証明するための中点連結定理の使い方 (中点連結定理は,親の性質が子に遺伝) -- 長方形ということが証明できた。4つずつの点が3組あるから円は3つ。でも,それらは一緒といいたい。それを証明するための隠れた脇役はどこにいるのかな。 - 「一つしかない正解を発表する」というスタイルとはちょっと違った発問や,発言したことへの価値づけや,それを次につなげていくこと -- 略 - 授業は「ライブ」であり,「一期一会」的存在です。同じようにすれば必ず同じことが生まれるわけではないし,そこでの失敗は取り返しがつきません。 -- 授業では「使える時間」等はとても重要なリソースで,そこから逆算して,「ここで焦点化すること」「ゆっくり時間を使うべき活動」「割愛する活動」なども,その場で判断しないといけません。 -- 一方,今回のように,ちょっと複雑な問題は,解決のステージが複数あるので,その切り換え等では「みなさんの空気」を読み取り,それに合わせることが必要です。「だいたい,問題は理解できたよね」「解く気にならないね」「それならいけそう」「なるほど,そういうことか」「もう,ここまでで後は各自にまかせればいいかな」「みんなここを見落としているようだけど,注目しようか」など。 -- 授業記録では「会話記録」が中心になりますけど,言語の記録だけでは表せないものも,実際の授業ではかなり重要だし,会話記録としては残されない,グループの中での会話などが重要なことも,多々あります。 - そういう授業を体験するのは,「実習に行ってから」になるでしょうけど,事前の準備として,「意図していないことは実現できない」ということを理解しつつ,「意図を語る」ことの大切さを,残りの3回で理解しつつ,最後の「動画作成」にチャレンジしてください。 **** 余談(3) -前日の時点においても,「必須」への書き込みをしている方は半数以下ですね。 -私は基本的に,「一方通行の授業」は行いません。 -もちろん,大枠は事前に考えていますけど,「みなさんの反応を踏まえて」次を構築します。 -書き込みに関して「それを生かして次をつくる」上で,タイムリミットは水曜日朝あたりまでです。 -「単位のためにクリアする」という意味では,期限を多少遅れて提出することも含めて「寛容」ですけど,そういう方の反応は授業で生かすこともできないだけでなく,「そういう方は,その程度の扱いで十分ということなのね」ということで対処します。 - すべての人が「この授業でがんばる」必要もないし,すべての人が「授業でがんばる」必要もないのが大学です。 - 「何かで,自分のブレイクスルーをつくる」のが,この4年という大学生生活であってほしいし,その「何かが語れる」なら,この授業で反応悪くても「問題なし」というのが私の価値観です。 0.4 九点円という素材では,「観察・予想・検証」の手段としてのGC - ある意味で,初等幾何的な証明問題での動的幾何の使い方といえるでしょう。 - 「類例」を探すとしたら,そういう,「初等幾何的な証明問題」になると思います。 - 過去の共同研究をふり返ってみると,1990年代は公立学校でもいろいろなことに取り組んでいたことを実感します。 - その頃,中2で合同も相似も扱っていました。 - その頃と比較すると,今は図形のカリキュラムはとても貧弱になっているのはたしかですね。 - 高校の数Aにいろいろな面白い話題は移ったけれど,高校では入試に出ないから,やらないし。 0.5 今日は,教科書にある話題を出発点にしつつ,もう少し動的という意味での「独自性の強い」ことに焦点を当ててみます。 - ある意味で,教科書などでは出てこない点に焦点を当ててみます。 - できるだけ,2つの事例を扱いたいと思うので,多少「はしょる」かもしれません。 - 「今は教科書になく」ても,10年後には「扱われている」かもしれません。 - 逆にいえば,「今の教科書は,今という制約の中で構成されている」のです。 *1. 「いろいろな場合を調べる」ことが「動的環境」を使うとどう変わる? **1.1 教科書のある問題から(紙にフリーハンドで書くことを前提とした授業) -好きな四角形をかこう。 -4辺の中点をとろう。 -それらをむすんで四角形をつくろう。 -どうなった? *** 模擬授業として「ちゃんとやってみる」と,どうなるかな - みなさん自身が取り組んでみましょうね。 - 「証明する価値がある問題」として,どういうことを見いだすでしょう。 - 「証明問題」としてのおもしろさはどこにあるのでしょう。 - 「問題」としての魅力は,どういうところにあるのでしょう。 *** 別の教科書では(R3年度の場合) - クローズドな問題(〇〇を証明せよというスタイル) - 「いろいろかいてみよう。どんなことが予想できるかな」 - クローズドな問題だけど,その前に中点連結定理のところで「動かしている」 - PC上にある図を動かしてみよう **1.2 「GCで動かして調べる」ことを前提とすると何がどう変わるだろう -- R7の教科書では,QRコンテンツとして使えるようになっている。 -- 多くの先生にとっては,「確認しようか」という使い方かもしれない。 -- 少し発問を変えてみよう。 - (アバウトに)「動かしてみるとどんなことがわかるかな」 - もう少し「ちゃんと調べてみる」とどうだろう。 --「ちゃんと調べる」って,どういうこと? **1.3 「調べるべき場合」って,どういう場合? - 実際にやってみましょう。 - 「一通り調べてまとめたらおしまい」ではありません。 - そこからどういう「問題を発見できるのか」が重要なのです。 - みなさんがつくった図から,うまれた問題だと,「自分がつくった問題」という感じがしますよね。 - みなさんの気づきを手がかりにしたら,「〇〇くんの予想」とできますよね。 - 学級全体で取り上げなくても,グループの中で,「これどうかな」「そんなはずはない」「たしかに」「すごいね」とか,会話の中で勝手に盛り上がること,ありそうですよね。 -- 4人で1台くらいを取り囲んでワイワイやっていると,秘密基地のような感覚になります。 -- 先生はあえて「そこに踏み込まない」のも,一つの手です。 **1.4 みなさんから,今日の場合にうまれた問題は? - 「ぜひ,いい問題を見つけたいものです」 - ここで,「こだわるべき価値」を実感できたら,言語活動等を利用しながら,深掘りするかもしれません。 - あまり反応がよくなければ,今回はスルーします。 - 「どういうことがしたかったの?」を知りたい方は,飯島(2021)等をお読みください。 **1.5 いい問題になっていかないときには,新たな視点を投げかけることにしましょう。 - 私の無茶振りに対して,みなさんはどう反応していくでしょう。 **1.6 こういう「動的な探究からみた図形」は,「静的な図形観」と違うことって,あるのかな。 - *2. こういう問題,どう思います? **2.1「私の正体は?」(1) |#00010-0620-01| -もちろん,教科書にこんな問題はありませんし,入試でも出るはずはありません。 -でも,それは「紙で出題しないといけない」からですよね。 -「『クロールでの息継ぎの仕方を文章でかけ』で書けた文章で評価する」のと,「実際にプールでできるかどうかで評価する」のと,どちらがいいでしょう。 *** こういう問題に取り組んだり図との接し方をしていると,図形の自然な見方・接し方はどう変わるのでしょう。 - 四角形には,どういう種類がありますか? - 教科書で教えるのは,正方形,長方形,ひし形,平行四辺形,台形,一般の四角形 くらいかな? - これらはどういう関係にあるのでしたっけ。 - それら以外に「注目してもいい形」ってあるのでしょうか。 **2.2「私の正体は」という問いとしては... ***これは簡単すぎる |#00015-0612-00| -なぜなら,「私の正体」としては,「もっとも一般的な表現」を求めているはずなので,「見たらわかる」から。 ***これは少しまし? |#00014-0612-00| -最初に登場するのが,「正方形」で,それとは違う形が答えなのだから。 -でも,やっぱり「見たらわかる」ので,やさしすぎる。 ***問題らしくするには,「特殊な場合」に注目した方がいい -すると,「ABCDが〇〇のときEFGHはどんな形になるでしょう」の方がいい。 -- でも,一通りやれば,答えは見つかるはずなので,「ただの作業」でしかないかも -「ABCDがどんな形のとき,EFGHが〇〇になるでしょう」の方が,調べがいがある。 -「ABCDがどういう条件を満たすとき,EFGHはどんな形になるでしょう」の方が,ワンランク上 -- ここでは,「形ではなく,条件で考える」というのが,「ワンランク上」と表現する根拠 --- 関心がある方は,「思考水準」というのを調べましょう。 ***そういう探究の全体像を生徒に委ねてしまうとしたら |#00014-0612-00| -この図形を動かして探究し,わかったことをまとめなさい。 -- そういうオープンな問いでは,「さまざまな調べ方や観察結果や解釈の多様性などがあり,そういう調べ方やまとめ方が身についている」ことが不可欠になる。 -- 「言われたことを効率よくやって,先生が想定している一つだけの答えを見つければいい」のではなく,「自分なりの気づきや問いをうまくアピールする」ことや,「そこで何を考えることが大切と感じたか,まだ足りないことは何か」などを,自律的に考えることが大切。 -- さらにいえば,「自分が面白いと思うから夢中になって取り組む」という,「主体的」な学びがあるし,追究すると「深い学び」になることが多い。 -- そして,最初から難問を解くというのではなく,観察しては疑問をもったり,それに寄って次のことを調べたり,推論したりとしていく中で,「自分の中での対話」や,「ソフトとの対話」や,「仲間との対話」「先生との対話」があったりするのが普通なので,「対話的な学び」も不可欠。 **2.2「私の正体は?」(2) -「類題」もパッケージにしていました |#00011-pqrs-square| **2.3「私の正体は?」(3) -「類題」の一つですが,簡単そうで,むずかしいです。 |#00012-0620-02| ***余談 -上の問題のどれかに取り組む様子を動画にしてもかまいません。 **2.4 ワークシート -このような探究をするとき,「タブレットを観察するだけ」はよくありません。記録を残すべきなのです。 -一つの方法は,スクリーンショットを残すなどの方法もあります。ロイロノート等で共有する上では,その方が「きれい」です。 -でも,数学で大切なのは「見た図をそのまま残す」ことよりも,「そこにどういう特徴があると感じたのか」であって,「書き込み」が重要です。 -また,今回のような場合は,「いろいろな場合を調べ」て,「全体を観察し,そこから特徴を見いだす」ことが重要です。 -そういう意味で,「対応表」というのを,ワークシートとして用意しました。 -もちろん,「もっといい方法」があるかもしれません。 *3. 気楽な「問題」で,ちょっと気分転換(をするかもしれない) |#00006-0613-02| -時間の都合で,(取り組むことを)「(必須の)宿題」にするかもしれません。 -- 体験を語るために使う手もありますね。 -紙でも同じような問題はできるかな? -できないわけではないけどね。 -最後の問題はできるかな?(高校生向けです。できなかったら(任意の)宿題にしようか。) -「紙」の他に,図形指導では教具としての「ジオボード」を使うこともありました。(最近はあまり見かけません) - 教科書の問題でいうと,「格子点」を使う問題といえます。 - 格子点がかいてある紙で取り組むこともできますが,上記のような環境では,何か変わるでしょうか。変わらないでしょうか。 - 中高のことにはあまり関心がないけど,小学校に関心がある,という方にお勧めの素材です。 *4. この問題の「価値」はどこにある? -たぶん,下記まではいきません。 -関心があるかもしれない方のために,ねんのため,おいておきます。 -....次回,扱うかな? **出発点 -線分AB上に点Cをとり,AC,CBを,それぞれ一辺とする正三角形△ACD,△CBEをABの同じ側につくるとき,AE=DBであることを証明しなさい。 --(啓林館,中2,P.158) |#00007-0613-03| **次に何をするのだろう。 -なぜ? **「動かす」観点からみると,どういうことを発見するのだろう。 - *5. 課題 - 5.1 学びネットのフォーラムとして,次のことを掲載しますから,次回までに書き込みをしてください。 -- 「生徒目線」(必須) -- 「教師目線」(必須) -- 「鈴木実践」(任意) --「今日のような実践のための問題」(任意) -- 今日のCIIの授業についての感想や今後への希望(任意) --- 希望をフォーラムに書きたくないけど伝えたい場合はメール(yiijima@auecc.aichi-edu.ac.jp)でもいい。 -5.2 次のことをしてください。(木曜日 09:00まで) -zoom workspaceをダウンロードし,インストールする。 --@https://www.zoom.us/ja/download,ダウンロードセンター -冒頭で示したことからテーマを選択し,動画を一つ作成する。 -まなびネットに保存する -うまくいかないときには無理をせず(時間の浪費をせず),「どういうことで困ったか」を次週の授業で質問できるようにしておけばいい。 ---- *6.鈴木実践について - 今日の事例に該当する授業実践は,名古屋中での鈴木実践です。 - 鈴木先生は,私に「iPadで動くGC」のおねだりをしてくれました。 - 開発してみて,それまでのコンピュータとはまったく別の学びが生まれることを体験し,そこからの研究授業は大きく変わりました。 -- だから,鈴木先生には感謝しかありません。 -- 鈴木先生の側では,おねだりしたら,iPad 11台とそのためのソフト(GC)が「ただ」で提供されるのだから,ありがたいと思ったのかもしれません。 -- ただ,それをきっかけにいろいろな研究授業をしなければならなくなるので,「ただほど高いものはない」のかもしれません。 -- 互いにいい意味でのおねだりをしながら,大学と附属の「いい関係」から,世の中にいろいろな提案を楽しんでいたひとときでした。 - iPadが生まれたのが2010年。iPad版の試作GCで鈴木先生が初めての研究授業をしたのが2011/1。今回の授業ビデオは2011/10の公開授業。iPadの上で動作する動的幾何ソフトで,しかもマルチタッチの課題に生徒が「4人1台」でワイワイしながら取り組むというのは,これも違う意味で,「世界で初めての実践」だったと思います。 - GIGA以降は,「一人一台」が重視されていますけど,「4人1台」という使い方は,実はもっと注目されていいはずだと思います。 --@@https://www.meijitosho.co.jp/eduzine/opinion/?id=20120286,2012年に書いたweb上の記事(明治図書) --@@http://hdl.handle.net/10424/4646,飯島(2012)iPadとGC/html5を使った授業による二つの提案 ―附属名古屋中学校での鈴木実践に関連して― --@@https://doi.org/10.14949/konpyutariyoukyouiku.37.17,飯島(2014)iPadで作図ツールGC/html5を利用した実践―愛知教育大学附属名古屋中学校におけるグループ活動での利用を中心に― - 鈴木先生の授業の魅力は,とてもわかりやすいです。 -- それを実感するだけでも,授業ビデオをみる価値はあると思います。 -「今日のような取り組み(対応表を使った探究)」について記述したもの --@@http://hdl.handle.net/10424/00008557,飯島(2020)GC を使った数学的探究における事実と問いのダイナミズム -対応表をもとに進める数学的探究に関するケーススタディを基にして- ----- *A. 「1,2の補足」 - 図形を対応(関数概念を一般化したもの)として見る - ** A.1 関数の考え = 「きまればきまる / 変われば変わる」 - 石川先生が講義されたように,関数はいろいろな把握の仕方があります。 - 小学校段階での「関数の考え」は,ざっくりいえば,「きまればきまる /変われば変わる」であり,それは表を縦にみる/横になるとも表現できます。 - 「ABCDがどんな形のとき,EFGHとどんな形になるか」という問いは,文字通り「関数の考え」を図形に適用しているともいえるのです。 - ちなみに,狭い意味の「関数」かというと,数に対して数を対応させているわけではないので,関数ではありません。 - 四角形という集合から四角形という集合への対応なのです。 - この四角形という集合は,数のようなシンプルな構造になっていません。包摂関係があります。 - 包摂関係を考えると,学習指導要領では扱っていない,等脚台形やたこ形も「注目すべき形」のはずなのです。 - 包摂関係の理解は,ある時期よりもかなり軽い扱いになっていますが,動的環境での学びが前提なら,積極的に扱うのが自然といえるでしょう。 - 逆に,「教科書がすべての基準」と考えるなら,動的環境は,「面倒なことが起こるやっかいな代物」ということになるでしょう。 **A.2 大学生なら意識化できるかな? 四角形の集合の関係性 - 一つの理解はベン図です。 - 算数の授業で扱ったように,正方形,長方形,ひし形,平行四辺形,四角形の関係は,ベン図で表せます。 - 台形を追加しても表せますが,ここの学生でも,数学以外の学生では,ベン図で表すことは苦手です。 - 等脚台形やたこ形がはいると,ベン図では表せません。円の夏節する四角形なども考えると,もちろん無理です。 - なぜ,無理なのでしょう。 - ベン図は2次元です。でも,四角形の世界は2次元では収まらないからです。 - では,本当は何次元なのでしょう。 - 動的幾何ソフトでは,「それにちょっと触る」ような世界を提供しています。 - 数学好きな方,幾何学が好きな方は,「考えてみる」といいと思います。 **A.3 観察結果をまとめるのは終着点ではなく,出発点 - この観察結果は,「いいかげん」です。 -- 図形は無限の要素から構成されているのに,観察しているのは数個で,スケッチは一つだけ。 -- 「長方形」と記述しているとしても,それは「自分の解釈」であって,正しいとはかぎらない。 -- とくに,特別な特徴があるのに,見落としている可能性があることが多い。 - それらは妥当なのか,またその背景にある本質は何なのか。それを見抜くための「出発点」です。 - 「すべてに共通すること」が見つかることや,「これがないのはおかしい」が見つかることがあります。 - たくさん観察したらいいのでしょうか。....キリがありません。 - 理科と違って,図形の構成の仕方から,かなりのことが演繹的に導かれます。それは推論することができます。 - 観察と証明のモードを切り換えながら前に進むのが,この手の探究なのです。 *B. 動的と静的での「図の流儀」や,「適度なゆるさ」の利点 **B.1 「数学的命題は一般性を好む」ことに伴う「教科書での図の流儀」と「理解の仕方」 - 条件を満たすなら,「どんなときでも成り立つ」ことに,注目している。 - だから,数学がわかっている人は,図をかくときに,「特別な条件を含まないような図」をかく - 教科書などでの図も,「そういう図」がかかれていて,「この特別な図」ではなく,「こういう図すべての代表」(代表的特殊)としてかかれている。 -- でも,生徒は,そういう目でみてくれているとはかぎらない。 -- 目の前にある「この図だけについていえること」と思っている可能性もある。 **B.2 「条件を満たすようないろいろな場合を調べることができる」形で提供するのが,動的な図 - そういう図を提供しようとすると,過去においては,「モノでつくる」しかなかった。 - もう一つの方法は,「たくさんかく」こと。 - でも,フリーハンドでそれなりの精度でかける問題は,今回扱った問題くらいで,ちょっと複雑になると,精度が悪いので,観察に値しないか,ちゃんとたくさん作図すること自体が大変。 - そういう意味で,「ほぼどんな図に関しても,いろいろな場合を調べることができる」汎用ソフトがうまれたことを意味していたし,90年代の人々は,その新鮮さに感激した。 **B.3 紙では取り組めなかった「類題」 - 「四角形ABCDの4つの角の二等分線の交点を結んでできる四角形」の問題 - 「中点」の場合はフリーハンドで書くだけでもかなり精密なものがかけるし,そこから推測できる。 - 「角の二等分線」の場合は,フリーハンドでは精密な図をかくのは大変。 - 上記の問題とほぼ同じ構造だし,同じ探究を進めることができるのだが,まったく違う展開が広がっている - 1992年に附属名古屋中で研究授業を行った(授業者は玉置先生。) - きっと「そういう授業実践(不可能の証明)」は,世界で初めてだったはず。(みなさんだけでなく,石川先生でさえ,生まれていないときのこと) -- もちろん,幾何的な性質に関しては,知られている内容だけれども。 - 他にも,いろいろな類題はつくれるし,取り組んできた。 **B.4 一般の反対としての「特殊」あるいは「特殊化」が自然に生まれる - 「いつもうまくいくよね」なんていうと,「え,こんなのもできましたよ」とか言いたくなる。 - 生意気な中学生は,特に。 - 「すごいね」とほめてあげたい。そして,それを生かしたい。数学的にも。 - 特殊な場合には,特殊だからこそ可能なことがいろいろある。 - その意味は,問題それぞれによってまた違うので,みなさんなりにも深めてほしい。 **B.5 逆 - 「このときには,こういうことが成り立っている」ということに気づくと,「そういうことが成り立つのはどういう場合なんだろう」ということが気になる。 - それは「逆」の発想だ。 - 決して特別なことではない。 - 「特別なことではない」「それは自然な発想だ」というのが,動的環境では大切なことであって,「一般・特殊」を自然に扱いたいなら,動的環境を選択する方がいい。 -- もちろん,「よくわかっている人」は,そんな環境がなくても自然に「一般・特殊」を使いこなせるのだけど。 **B.6 適度なゆるさと問題発見 - 対応表などでは,いろいろな意味での「いいかげんさ」がある。 - 「本当はどうなるはずなの?」ということから,「理由」や「理屈」を考えてみる価値を引き出したい。 - また,いろいろな問題発見をしていくことができるのが,動的環境でもある。 - そのために重要なことは,「適度なゆるさ」「適度なアバウトさ」であって,「想定外をよろこぶこと」でもある。 -- 「正解主義」でコスパよく問題を解決したい人には楽しめないし,考えられないことかもしれない -- でも,「探究」って,本来そういうものなのです。(最近の高校教育関連でよく登場するキーワードですけどね。) -- うまくいくかどうかわからないけど,「おもしろそう」から出発するものなのです。 *C. 「3」の補足 -- 静的での条件変え vs. 動的での観察や作図 -- **C.1 条件変え - 「命題」は新しいことを発見するために使えます。 - つまり,命題をさまざまな構成要素に分けて考えてみて,その構成要素を「他に変えてみる」ことで,新しい命題を生成することができます。 - 元の「定理」と似た命題なので,やっぱり成り立っている可能性も高いです。 - そうやって「一ついいもの(定理)」があったら,そこから多くのものを増殖していくことができるわけです。 - もし「辺の上」でなかったら,どうなるのだろうか。 - もし,「正三角形」でなかったら,どうなるのだろうか。 - こういうのを,what if not ストラテジーといいます。関心がある方は調べてみてください。 **C.2 「少し自由に動かせるようにしておいた図」を動かすと,「それはできる」 - 最初の文章通りに図をつくるとダメですが,少し自由に作図しておくと,「動かせば,観察できる」ことになります。 - 別の言い方をすれば,「ちょっとゆるく図をつくっておいて探究してみる」のも,動的な図の扱いの一つなのです。 - 観察してみて,一つでも反例が見つかったらその仮説は却下されます。 - 観察してみて,反例が見つからないということは,「かないいい線」(妥当性)ということになります。 - でも,それは証明ではありません。証明する「価値がある」ことを示してくれているのです。 - 簡単に証明できるとはかぎりません。 - 証明できないとしても,「証明する価値がありそうな問題の発見」あるいは「予想の発見」という価値があり,レポート等にまとめる活動をすることができるでしょう。 -- 「いい問題を見つけること」は,ときとして「証明することよりも価値がある」のが,今の時代です。 **C.3 動かすだけではだめな場合は作図 - 正三角形を正方形に変えたい場合,GCでは作図しなおさないといけません。 - でも,さっきの問題を作図するときの手続きの「正三角形」を「正方形」に変えればいいだけです。 - 「そういう探究をできるようになりたい」なら,「作図のスキルを学べばいい」でしょう。逆に,そこまで必要ないと思うなら,「与えられた図を動かすだけ」でいいでしょう。 - ICT利用では多くの場合,「目的に応じて程度のスキルの習得」をすればいいはずのです。 **C.4 そのソフトではサポートしていない場合もある。 - GCでは「正『3』角形」を「正『4』角形」に変えられるような意味での「正『n』角形」はサポートしていません。 - そこを変数として自由に扱えるような動的幾何ソフトもあるかもしれません。 - GCでは「円」を「楕円」などの二次曲線に変えることはできません。 - 二次曲線を幾何的対象として扱える動的幾何ソフトはあります。 - 最初から高度なソフトを使うようにする方がいいのか。必要に応じて,「乗り換える」ことを勧める方がいいのか。 - あるいは,「入試では使えない」のだから,すべてのソフトの使用は禁止する方がいいのか。 - そのあたりは,「みなさんが担う時代の教育のスタンダード」を検討してみてください。 *D.みなさんの投稿に関連して *D.1 見つけた問題の解決に,GCが直接的に役立つとはかぎらない。 -もともとの問題は,多くの場合,「紙と鉛筆」等で解決することを想定し,最適化された問題になっているので,動的ソフトを使うことが役立つとはかぎらないのです。 -もちろん,「動かすことを想定している」問題の場合には,役立つこともあります。 -うまくかみ合っていないと思うとき,広い観点で検討すると,次の可能性があります。 -- その問題で動的ソフトを使ったときの「新しい探究の仕方」や「新しい問い」を発見する -- その問題でも適切に使えるように「ソフト改善の可能性」を考える -- 使い物にならないので破棄 -そういうときに考えることの一つは,「問題の正解を出す」だけでなく,「その問題にはどういう数学的価値があるのか」を幅広く考えてみることです。 -数学でのICT利用には,そういう面での検討が必要な場合が多いので,「簡単そうにみえて,実は結構むずかしい」のです。 -- 実際,「答えが簡単に出てしまう=カンニング」「正しい図をかくことくらいにしか意味がない=紙で十分であって,御利益を感じない」 *D.2 有馬くんの「モーザー数列」に関連して -@https://manabitimes.jp/math/1326#:~:text=%E6%95%B0%E5%88%97%20%20%7Ba_n%7D%20%7Ban%7D%20%E3%82%92%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E6%95%B0%E5%88%97%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82%20a_1%3D1%20a1%20%3D,%3D%208%20%EF%BC%88%E5%86%86%E3%81%AB%E5%86%85%E6%8E%A5%E3%81%99%E3%82%8B%E5%9B%9B%E8%A7%92%E5%BD%A2%E3%81%AF%E9%A0%98%E5%9F%9F%E3%82%928%E3%81%A4%E3%81%AB%E5%88%86%E5%89%B2%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%89%EF%BC%8C%20a_5%3D16%20a5%20%3D%2016%20%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82, 高校数学の美しい物語 -上記のサイトでも詳しく説明してくれていますが,この教材の「魅力」はいろいろな点にあります。 -まず,「手で書いてみて,数えてみて,予想してみる」という活動に適していますよね。 -1,2,4,8,16となるので,2^nと予想したくなります。 -同時に,n=6くらいになると,「かくのも,数えるのも大変」になってきます。 -テキトーに書いてのではうまくいかないこともあります。それは「一般の位置」ということが関連しています。 |#00008-0613-04|#00009-0613-05| -たとえば,上記左の図のようなものを使って,「位置を変えてみると何に気づくか」を考えるのは,一般の位置についての理解を深める上で役立つかもしれません。 -「導出」をする上では,それまでのものがあって,新しく加えるときに何が起こるかという仕組みを意識化することが大切ですが,右の図のようなもので,それが発見しやすくなるでしょうか。 -発見しやすくなるとしたら,「そういう使い方ができる事例」となるでしょうし,あまり役立たないなら,あまり効果がないといえるでしょう。 -このようなことを考える事例としては,次の問題の方が適しているような気もします。 -- 平面にn本の直線をひく時,最大いくつの領域に分割されるだろうか。 -この問題は手がきでは「現実的な限界」を実感するので,数学的帰納法にもっていくのが普通ですが,「それを気づくやすくする」ために,「図の書き方を工夫する」方がいいと思うのです。 -それがうまくいくと,次の問題も簡単に解決できるように思うのですが,いかがでしょう。 -- 空間にn本の平面をおく時,最大いくつの領域に分割されるだろうか。 -少なくともこの問題には,「動的幾何ソフト」は本質的な部分ではあまり役に立たないように,私は感じています。