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*0.はじめに -「ここに書いた」ことを授業の中ですべて解説するわけではありません。 -「ここにあえて書いていない」こともあります。 -授業は「対面での会話の中で進める」ものです。 -そして,「学び」は,みなさんが個人の中で行うものも含めての「学び」です。 -毎回,「感想」に答えるわけではありませんが,いろいろな形で「生かせれば」と思います。 -さらに深めたいこと,わからないことがあったら,授業の中で質問してくれてもいいし,「まなびネット」やメールで話題にしてくれてもかまいません。 **0.1 先週のビデオのこと -一度観察してみると,いいですよ。特に「前からみえる景色」は,いろいろな情報を知らせてくれます。 -算数・数学って,「考える」ことが中心だし,だからこそ,表情も変わるし,「気づいた瞬間」とかが,大切だったり,「わからない空気感」も,感じられるわけですよね。 -「正解を発表」して,「答え合わせをする」ことだけに,子どもの発表を使うのは,もったいないと思いませんか? **0.2 算数では,「わかった/わからない」のYes/Noがはっきりしているように思えるけど,.... - テストで採点するとき,〇か×かがはっきりしているのが,算数です。 - それは,「いい面」もあります。 - でも,「正解主義」に陥ってしまうと,いつも,「先生がいう通りにできるようになること」が重要になってくるし,「間違っていることをしてしまう,発言する」のははずかしいことになるし,「隣と相談」は,「わかっている子からわかっていない子が教えてもらう」ことになってしまうし,学年,学校種があがっていくにつれて,「借金の積み重ね」みたいな感じが増えていったり,「数学嫌い」あるいは,「不安や恐怖」のモトになってしまったりするわけです。 - 特にスモールステップにするとき,「〇や×」ははっきりしてい「間違ったときに,クリアすべきこと」が明確だったりするわけで,それを一つずつクリアして「みんながわかるところに到達する」というのも,もちろん,一つの方法なのですけど。 - でも,そもそも「そういうもの」なのでしょうか。つまり,「正確かどうかはすべてはっきりしているもの」なのでしょうか。 ***0.2.1 前回の問題は,「奥が深い」/ 「一つの正解なのか?」と言われると,.... - 前回の問題は,「そういうものではない側面もある」ことを理解してほしいから扱っていました。 - 「いろいろな気づき」の可能性がある問題ですよね。 - その気づきは,「一つの数だけに通用する」ものではなく,「それがわかれば,もう少し広い世界に通用する結果」を見抜けるものですよね。 -- 「もう少し広い世界に通用するアイデアなんだ! 」と思ってほしいのです。 -- 「一を聞いて,十を知る」ことのおもしろさをわかってほしいのです。 --- 「マイナスを聞いて,プラスを知る」ではないですよね。 -- 「2+3=5」は,「10+11=21」にも通用し,「1兆3でも大丈夫」で,「〇〇だったら,必ずうまくいく」と見抜いてほしいわけです。 -- 中学校では,そういう一般化された知識を表現するために,文字を使ったりします。 -- 小学校では,基本的に,文字は使いません。でも,「見抜くことの魅力」は,体験してほしいし,それは「ねらいの一つ」のはずです。 - 普通の問題なら,「それが見抜けるかどうか」で,〇と×が分かれるかもしれません。 - でも,今回は,まだ「先」がありますよね。 -- 1+2+3 = 6 から なにかを見抜く人 -- 3+4+5+6+7 = 30 から,なにかを見抜く人 -- 「それらのことから,さらに先のこと」を見抜く人 -- いろいろです。 -- これらを見抜けないと,「正解ではない」のでしょうか。 -- いわゆる,「部分点」を考えるといいともいえますね。 - 次の突破口は何でしょう。「いくつか」あります。 -- 「5の倍数なら,5つの和で表せます」というのは,本当に正しい命題ですか? -- 「3個, 5個, 7個,.... あそうか,わかっちゃった。」たしかに,すごいことを見抜いたけど,なにかちがうことに気づくチャンスでもありますね。 - そこを打開する方法も,実は複数あります。どちらがいいとはかぎりません。そして,本当は,この問題は,「そこ」が醍醐味でもあります。 - ちがうところに注目することも可能ですね。 -- 8+9+10 = 27 -- 14+15=27 -- 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 もそうだ。 - ここから,何に気づけるのでしょう。 - 気づいたことに焦点を当てると,そもそも「何が問題なのか」が変わります。 - いや,そもそも算数は,「考える」ことに焦点を当てたいわけで,「気づいたこと」はどういう価値があるかを明確に表現しようとすると,「問題」と「その解答」という形で,わかったことを明確に表現するような,そういう教科です。 - 実はこの問題,数学的に「すっきりする」には,つまり,場合分けなどしないで答えを表現するには,一旦問題は自然数の世界でなく,整数の世界までひろげて考える方が「自然」なのです。 - 「そうしなければならない」わけではありません。「そうする手もある」だけです。 - でもきっと,数学科の学生に対しては,「そういう理解ができることを求める問題」として位置づけますし,「同じようなことを経験した問題例を探せ」と指示すると思います。 ***0.2.2 前回の問題は,「ほぼ全員にとって,自分なりの数学的活動ができるはず」の問題 -- 小学生でも,きっと見つけること,ありますよね。(10はどう? ボーリングみたい どういうこと 1+2+3+4=10 とか) -- 理学部数学科の学生は,だいたい,こうなります。 (ΣK = N(N+1)/2 だから,一般式は N(N+1)/2 - M(M+1)/2 になる で,その式は何を意味しているの? わからない) -- みなさんも,多くの方は,「なにかしてみた」はずです。 -- いや,「正解を知らないからわからない」という方もいたかもしれません。でも,それを活性化したいから,具体的な数を割り振りました。 - とりあえずの活動をして,とりあえずの結果を得て,でもそれだけでは正確でなくて,そこからまた少し「考える」ことで,前に進みました。 - 一人だけで進んだとはかぎりません。友だちと相談したこともあるでしょう。 - 全員の結果を観察することで,前に進んだこともあるでしょう。 - 教室の前で,私と誰かのやりとりの中で,黒板にかくのを観察して,「あ,そうか」と思ったこともあるでしょう。 - それはきっと,「正解を教えてもらって,それをおぼえるだけのこと」ではなかったと,思うのです。 - 今の学習指導要領での表現でいえば,それは「数学的活動」なのだろうと思います。 - 「何をした」のでしょうね。 - それをきちんと意識化し,そういうことを,子どもが行えるようにすることを期待したいわけです。 - 「それをきちんと意識化し,言葉などでも表現できるようにすること」に焦点を当てるのが,「内容」で,「子どもが行えるようにする」のが,指導法といえますが,それらは無関係ではありません。 **0.3 「わかる」のには,いろいろな側面も,段階もきっとある - ある授業を観察して思いました。 - ある意味で,小学生が「わかる」様子って,「奇跡の連続」です。 - その授業では,「角」を導入していました。 - 三角形の一つの角以外の部分を先生(実習生)は隠して「ここ」といったけど,子どもにとってそれは「隅にみえる三角形」と感じたり,「二つの辺」と感じたりします。 - そもそも,みなさんは語れますか? 「角って何?」 - 私には自信はありません。 - でも,いろいろな活動を通していく中で,「こういう問題を考えるときに,角というのを意識すると,こんなことがわかり,それを通して,角ってなにかがわかったような気になっている」 - 分数なんかも一緒で,いろいろな側面があるから,きっとみなさんは,分数を「きちんとわかっている」とはいえないかもしれません。 - でも,そういう多面的な,そして多段階的な理解のどこかにいる,いろいろな個が,そのわかり方に応じて,いろいろなことを発言したり,活動をしたり,そういうことをしながら,なにか「おもしろい活動」をして,理解を深めたり,概念形成したりしていくのが,きっと小学校での学びなのだと思います。 **0.4 この授業では,「活動」を重視しながらすすめたい。 - 基本的には,「問題を解決する」ことを通して。 - 「正解を知っている人が,それを板書する」ことを主役にするつもりはありません。 - 「いろいろなアプローチ」を表現し,それをもとに,みなさんが活動することを主軸にするような授業です。 - 逆にいえば,「わからなさが残る」こともあるかもしれません。 - 別の言い方でいえば,「おもしろさ」や,「いろいろな人が参加してくれるからこそできること」を実感してみたい授業です。 -- うまくいくかどうかはわからないけど **0.5 「みなさんの書き込み」から -私にとって,ちょっとショックだった反応がありました。 -学校でも,「よくある」ことかもしれません。教員側の意図と,学生側(子ども側)の受け止め方がずれることは「ありうる」ことです。 -そしてまた,「むずかしい」ことでもあるのです。 -普通の授業でいえば,「誤答などを生かす」つもりでいても,子どもは「公開処刑」のように受け止めてしまうこともあります。いや,「そう受け止めた」段階で,それはハラスメントになるのかもしれません。少なくとも「そう受け止めた方がいた」としたら,それは申し訳なかったと思います。 -私にとって,これまでの授業の中でも,「再履修」の方々は,いろいろな意味で,「サポートしなければならない方々」です。欠席しがちな学生もいれば,テストが苦手な学生もいます。そもそも算数・数学が苦手な方もいます。 -いろいろな意味で,「授業の中で活躍する機会をより多く提供したい」方々と思っています。 -「よくわかっていない子どもを演じてね」というような言い方をすることもあります。 -少なくとも教員になろうとしているみなさんにとって,「わかる」こと以上に,「わからなさ」を理解することの方がずっと重要で,そしてむずかしいのです。 -もっと強い言い方をすれば,私もみなさんも,「ちゃんとわかっているか」といえば,決してそんなことはないはずで,「どういうことに関してわかっていないか」を把握するところから,「学びはうまれる」はずなのです。 -それはきっと小学校での学びもみんなそうだと思います。 -「わからない」を明確にでき,適切な課題をつくれ,そして,いい学びをつくれることを「よかった」という感覚で共有できることは,この授業の一つの目標でもあり,また,「授業をそういう場として認識していくこと」もこの授業の一つの目標だと思います。 -でも,それは「みなさんが,そう思えること」も大切なことであり,もし,不快な思いをした方々がいたら,それは申し訳なかったと思いますし,そう感じないですむ範囲の中で,工夫していくことが必要ですよね。 *1.算数科の領域の構成 / 今と過去 **1.1 「解説」の目次をみると,....え,誤植なの? / Cが二つある -- 「5つの領域」なのだが,記号は,A,B,C,C,Dと,4種類しかない。 - p.38に,「小学校算数科における領域構成の見直し」がある - 中高との関わりは,わかりやすくなった。 -- 中学校では,A 数と式 B 図形 C 関数 D データの活用 につながっていく。(C 測定 につながるところがないともいえるが....) - ある意味では,「数量関係」はわかりにくかったともいえるが,.....。 **2.2 過去の「数量関係」は,他の領域とは位置づけが違った。 - 他が「対象が明確」であるのに対して,数量関係は,「考え方」中心の領域 --具体的には「関数の考え」「式の表現と読み」「資料の整理」だが,広く数学的考え方を扱う領域といえる。(他にも,集合の考え,記号化の考えなど,....) -- 「資料の整理」は,今のご時世に合わせて,「データの活用」となり,統計教育は,小~高において,重視される方向性になることが表現されているといえる。 -- 「関数の考え」は,本来は,「考え」であって,知識中心ではないのだが,「変化と関係」という単元になったことで,「考え」としての側面がうまく反映されるのかどうかが,疑問ともいえる。 -- 「式の表現と読み」などは,「数と計算」の中に組み込まれたような感じがする。 -- しかし,そもそも,数量関係というのは,他の単元と違って,「他領域や他教科で使われる考え方」を中心に構成されていて,「数学的な考え方」を表現していたはずで,今回の指導要領では,ある意味で,「数学的活動」という言葉で表現されるようになっている感はあるけれども,...どうなのだろうか。 - そういう意味で,「この授業の中」では,ある意味で,過去の枠組みを踏襲している感じがあるけれども,「関数の考え」「式の表現と読み」は,それぞれ1時間ずつ確保して,進めたい。(「資料の整理」は,「データの活用」として扱うけれども) *2. 「関数の考え」(と変化と関数) **2.1 関数 - これ,嫌いな人,苦手な人が多い。 - まず,そこを突破口にして,議論してみたい。 - 関数って,なんだろうか。 - 中学校や高校では,みなさんは,何を学んだのだろうか。 **2.2 関数は何のために役立つのか - そう「役立つ」って,キーワードだと思うんですよね。 **2.3 どんな関数を知っていますか? それはどういうことを表現するのに役立つのでしょう。 - 多くの関数は,「現実」と結びついているはずなのです。 ***2.3.付記 Excelの,こんな機能,知っていますか? - 「近似曲線」 -- 小学校の授業でも,よく,こんなことが議論になることがあります。 -- たとえば,理科の実験で,温度変化などの記録を取り,それをグラフにプロットしたあと,「つなげたい」と思うとき,「それぞれの点を結んだ折れ線にする」のか,「適当な直線をひく」方がいいのか。 -- 折れ線をひくのは簡単だし,散布図をかくときに,選択できます。点を通る曲線も選択できます。 -- 「適当な直線」って,Excelなら引けるのでしょうか。 -- この手のことは,fittingと呼ばれますが,数学の授業で教えられることも,使うこともないですよね。 -- 理科の先生なら知っているのかな? -- みなさんは? -@dis2stop.pdf,自転車の制動距離(高校・指導要領解説2009より) -@dis2stop.png,拡大 -@dis2stop.xlsx,Excelのファイル **2.4 「関数の考え」 を考えるために - ある問題を解いてみましょう。たぶん,次の3種類になると思います。 -- 中2的な解き方 -- 中1的な解き方 -- 小学校的な解き方 -それぞれに異なる特徴があると思います。 **2.5 「関数の考え」って,どう言葉で表現するといいだろう **2.6 こんな問題でも,関数の考えでとくことができる *3 課題 - 「今日の感想」を,まなびネットで *4 付記 -前回の課題は,基本的に,授業後10日程度。欠席した方は,多少の日数を追加したくらいで提出してください。 -ある日以降受け付けないというようなことはいいません。 -でも,「忘れてしまう」し,「課題がたまる」のもろくなことがないので,目安としての「10日くらい」ということにしています。 -逆に,日程を厳守する場合は,明示します。(その内容を,授業で発表するような場合)