*0.飯島担当部分に関して ** 0.0 誰? -- 再履修の方々には,1年生のときの授業を担当しましたね。他の方々には初めてですね。 - 2025/3まで数学教育講座の教員,現在は名誉教授,非常勤講師(後期は水1,金3) -- 普段,自然科学棟550にいる。 - 2016-2018は附属高校校長(兼任) - 動的幾何ソフト(作図ツール)GCの開発や教材研究・授業研究等に1989年以降ずっと取り組んできた。 - GC/html5は,啓林館の教科書のQRコンテンツ等にも利用されている。 **0.1 主な授業のねらいなど -石川先生のシラバスにも掲載しているように「数学教育の指導におけるICTの利活用」 -それが一般的に表現するものすべてを扱うのは現実的でないので,その中でも「図形を中心的な素材として,ICTを利用した教材研究・授業設計/研究の方法を習得することを目的としています。 -過去においては,15回を通して毎回,一定量の課題を解決しながら,最終的に自分なりの指導案を作成し,発表することに取りくんできました。 -今回は4回なので,最終的には,「授業プランを語る動画」の作成・(共有・議論)をターゲットにしてみたいと思っています。 *** 去年までの進め方 -@https://yiijima.sakura.ne.jp/archive/auemath_iijima_20250331/2024_mathEdC2C/,去年後期2年生対象のCII **0.2 背景(1) / 担当者の「得意分野」& 国内や附属学校での取り組みの存在等 -授業担当者自身が開発したGC/html5は,図形の動的探究を支援するために開発したソフトですが,これまで30年以上にわたって,さまざまな授業研究等が国内各地で行われてきましたし。 -これまでも教師用デジタル教科書等でも利用されてきましたが,R7からの教科書では,QRコンテンツと言って,教科書のQRコードから直接利用できる形で使われるようになります。 -また,附属名古屋中学校などでの研究授業などの授業実践に関するリソースもあります。それらも活用しながら,「コンピュータ・ネットワークを利用した教材研究・授業設計/研究の方法の習得」に焦点を当てる授業です。 --@https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/chu_r7/math/feature/qr.html,啓林館のQRコンテンツ(動かす) **0.3 背景(2) / GIGA以降の「ICT」への大学での対応の限界 -実際,学校教育の現場では,GIGAスクール構想の実現等に伴い,ICT活用に関することは,ここ数年で大きな変革期を迎えています。 -ICT利用に関して,さまざまな側面が増えてきていることもまた,事実です。 -一方,大学の学部の授業においては,デジタル教科書にしろ,GIGA端末の背景にあるクラウドシステムを提供することなどもできず,「学校と同じ環境」を提供することはむずかしいですが,逆に実際の学校での変化は激しいので,みなさんが就職する段階での「標準」を提供することはそもそも無理だともいえます。 **0.4 普遍的に通用するはずの「デジタルと数学教育とのつきあい方・考え方」 -学部で学ぶべきこととして,生涯にわたって通用するはずのことに焦点を当てるとしたら,今の状況も踏まえながら,冒頭に上げた次のことは,「デジタルと数学教育とのつきあい方・考え方」につながると思っています。 --「図形を中心的な素材として,コンピュータ・ネットワークを利用した教材研究・授業設計/研究の方法を習得すること」 **0.5 「この授業の教科書」について - 過去においては,下記の本を「教科書」としてきました。全体像を書籍として理解し,把握する上では役立ちます。 - 今回,「それを前提とした授業の進め方」はしませんが,希望される方には,2割引にて提供します。(もちろん,他の手段で入手することも可能です。) -- 飯島, 「
ICTで変わる数学的探究
」,明治図書,2021 - また,中学校,高等学校の学習指導要領解説に関しては,他の授業でも利用してきたと思いますが,同様に,教科書として扱いますから,入手しておいてください。 **0.6 参考書として - 附属名古屋中学校の先生方の取り組みを,次の本にまとめて,明治図書から刊行しました。 --@https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-101782-8,ICT活用を位置づけた中学校数学の授業モデル 1年 --@https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-101866-5,ICT活用を位置づけた中学校数学の授業モデル 2年 --@https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-101915-0,ICT活用を位置づけた中学校数学の授業モデル 3年 - 中学校数学科での,いろいろな意味でのICT活用の様子を把握する上では,かなりいい本に仕上がりました。これは,教科書として扱うわけではありませんが,それに準拠する形で扱いますし,またみなさんが,他の実践についても参考にするのに適している本だと思います。 **0.7 「中学校や高校の教科書」について - この授業において,教材を探す等の課題に際して,中高の教科書等があることが望ましいです。 - この「望ましい」というのは,「なくてもいい」という意味ではありません。「現行の中高の教科書を使うことが標準」だが,「過去,自分が使った教科書等でもかまわない」し,それと同様に,教材研究等を行える別の資料でもかまわない。ただし,「同等程度以上の取り組みを行えること」が大切です。 **0.8 「こういう方には単位は認められない」 - 最終レポートを提出していないなど,重要な提出物が提出されない。 - この授業では,「授業のビデオ」等を扱うことがあります。この授業の教育目的等を踏まえて撮影等を行って利用しています。当初の目的以外にそれを利用するなど,明らかに問題と思われる行為が発生したときは,授業への参加も禁止する等の措置をとることもありえます。(今までそんなことをする人はいませんでしたが) **0.9 特別な事情等がある場合は,できるだけ事前に了解をとってください。 - 特にコロナ禍以降,いろいろなケースが発生しています。 - できるだけ対応して,みなさんが「学ぶ権利」は守っていきたいと思います。 - 緊急性がある場合は,もちろん事後でもかまいませんが,事前に相談・連絡できる場合は,できるだけ「事前に」お願いします。 *1.数学教育にとってのICT **1.1 「予想」していますか? これからおこる変化 *** 児童・生徒数の変化 |みなさん(20)|2005|108万|3年後|6年後|9年後|12年後| |高校1年生(16)|2009|107万| -5万| -7万| -20万| -26万| |中学1年生(13)|2012|102万| -2万| -10万| -21万| -27万| |小学4年生(10)|2015|100万| -8万| -18万| -32万|?| |小学1年生(7)|2018|92万| - 10万| -20万|?|| |(6)|2019|86.7万||| |(5)|2020|84.3万||| |(4)|2021|81.2万||| |(3)|2022|77.2万||| |(2)|2023|72.9万||| |(1)|2024|68.6万||| *** 労働人口の変化 |私たち(65)|1960|160万| |(75)|1960|240万| |(56)|1974|210万| |(45)|1984|140万| - だいたい,毎年60万-80万減少していく。 - 10年つづくと,600-800万減少していく。 - これは労働人口だけでなく,日本の人口もほぼ同様に減っていく。 *** 愛知県は,他県よりもまだましかもしれないけれど,多大な影響があるのは「当然」のこと - 学級減や統廃合を繰り返していくだけなのだろうか。 - 「今までと同じ教育」でいいのだろうか。 - もっと重要なこととして,「少ない人数でも,この国を回していくためには,時代にあった資質・能力をもった子どもを育成しなければならない」はず - そして,貴重な人材を生かしていくための教育は,「未来への投資」として,重視せざるをえないはず *** みなさんの「働き方」も,きっと大きく変わるはず。 - たしかに,これまで,教職は,特に労働時間が長いという意味で,ブラックだった。 - でも,それ以上に,「いろいろな仕組みが古いまま」だったし,そこに投資がなされなかった。 - 幸か不幸か,コロナ禍を一つのトリガーとして,「GIGA以降,大きく変われるようになりつつある」 - そして,それ以上に,社会が大きく変化しつつある。 -- 最大の要因は,産業革命 -- 日本独自の問題としての,労働人口の大幅,継続的減少 *** この文脈で考えたときの「ICT」のあり方として考えていく必要がある。(と私は思う) - 個別最適化の習得型の学びをサポートするためのシステム - カリキュラムマネジメントをサポートするためのシステム - 探究型の学びを支援するためのシステム - さまざまな校務を支援するためのシステム - そもそも,「学びの場」は,学校だけではなく,生涯にわたって学びをサポートするものとしてのネットワーク社会 - 特に,次の10年は,AIによるサポートがかなりすすめられていくはず *** 「学びの機会」をさまざまに提供し,選択可能にしていく - 自己調整学習や,「学び続ける」人間像 - 時空間の制約や,さまざまなハンディキャップを乗り越えて,「学びたい人には学べる環境」を整備 *** 「異なる個性」が,共通の時空間に集まり,そこでないとできない学びを実現する場としての「学校教育」 - 「そこに行っても意味がない」「他でもできる」ようなことしかサポートできないものは,価値が失われていく - 「専門職」としての教員だからこそ,実現できる「授業」を目指していくことが期待されていくと思う。 **1.2 これまでの「教育の情報化」 - これまで, 約10年おきくらいに, いろいろなことが変わってきました。 - 1990年代 「コンピュータ室」の導入 - 1995年 インターネット元年 → 100校プロジェクトなど - 2000年代 電子黒板, (教師用)デジタル教科書 - 2010年代 タブレットの導入(一部の学校) - それらが,一気に変わるきっかけとなったものとしての「コロナ禍」と「GIGAスクール構想」の前倒し **1.3 あまりに変わらなかった「GIGA以前」。 - 10年おきくらいにいろいろ変わったとはいえ,「数学の授業」は,本質的にはほとんど変わってこなかったといえるでしょう。 - 学生のみなさんに,「算数・数学の授業で印象的だったICT利用は?」と質問しても,ほとんど反応がなかったのが常でした。 - その背景には次のようなことがあるかと思います。 *** 「数学は, ペーパーテストで, 限られた時間で正しい答えをかくためのやり方を学ぶ教科」なのか? - 以前, こんな発言がよくありました。 -- 「私の学校(高校)は, 進学校なので, コンピュータを使う授業はしません」 - もし, 「受験のための数学」を考えるなら, ある意味で, その先生の気持ちはわかると思います。 - でも, そういうことなんでしょうか。 *** とにかく「予算不足」の教育現場と,「全国の最低水準でもできること」でしかできない限界 - 電子黒板にしろ,タブレットにしろ,GIGA以前は,悲しい現実がありました。 - 「紙でさえ予算不足になって,満足に使えない」のが,.... **1.4 「今」は? - 「GIGA」を前提とした教科書が,やっと去年(小学校), 今年(中学校)ではじまりました。 -- QRコードがどの教科の教科書でも盛り込まれています。 - でも,学習指導要領は,「GIGA以前」のままです。 - そう簡単には変わりません。 - でも,「変わらない」と思っていると,きっと「こんなはずではないと思っていた」現実に遭遇することになると思います。 *2.数学教育にとってのICT(2) **2.1 数学教育を考える上での「背景」 - なぜ,明治維新のとき,「和算」を捨てて「洋算」に変わったのでしょう。 -- その背景の一つには,きっと「近代化」の中で,「自然科学や工業と結びついているものとしての数学」があったはずです。 - なぜ,数学教育現代化運動というようなものが起こったのでしょう。 -- これも単純ではないですが,スプートニクショットなどを背景に,東西冷戦の中で,科学技術振興,つまり技術立国には,それが不可欠だという認識があったや,理数教育を,より前にすすめる必要があるという認識があったことはたしかでしょう。 - その後,電卓,グラフ電卓,コンピュータ,インターネットなど,いろいろなものが進んでいきましたが,日本の数学教育は,「入試」などの影響もあるのか,あまり変わってきませんでした。 - 既存の「内容」の理解を助けるための道具として,というような位置づけでおしまいでした。 - そのままでいいのかどうかは,歴史が評価することになるのでしょう。 - ただ,はっきりしていることとして,「今は,society 5.0」であり,近代化以降,いくつもの段階を経て,新しい産業構造の時代に変わっているということです。 - 特に,AI関連のことによって,まさに今,いろいろなことの変化が顕在化しはじめている時代だということです。 - そういう時代の中での「数学教育」のあり方や,教科の構成や役割分担なども,変化してもおかしくないことを実感しておく方がいいと思います。 **2.2 「20,30年後の社会で働く未来人」からの逆算 -これまでの30年,「失われた30年」などと言われるけど,いろいろなことが「変わらなさ過ぎた」 -これからの20,30年は,まちがいなく,いろいろなことが変わる。 -「目の前の子どもたちが社会人になるとき」から,逆算したら,「どういう学びの出発点」を提供すべきだろう。 *** 基礎・基本はそれほど変わるはずはない。 -「基礎・基本」とは何を指すのか,知識・技能以外に *** 習得型の学びも,それほど変わるはずはない。 -九九の暗記や分数・文字の習得などは,将来も必須。 *** 「画一的人間像」の価値は相対的には低下するはず。 -「言われたことはきちんとやります」型の人材の価値の相対的低下でもある。 -過去においては,等質な人材を揃えることに大きな意味があった時代もあった。 *** 過去の学力観と,今の学力観での違いは? それはどう具現化されている? -もっとも端的に,「入試」での評価は変わったといえるのだろうか。 -でも,本来は「入試が最終ゴールのはずはない」 -入試以外のところでの「評価の在り方」って,.... ***2.3 この授業の中で考えたいキーワード例 -「主体・対話的で深い学び」 -「わかりやすい授業」 -「知識・技能」 -「思考力・表現力・判断力」 -「個に応じる指導」 -「言語活動」 -「観察・実験」 -「レポート作成」 -「問題の発見」 *3. 動的幾何ソフトの世界 ** 3.0 今一番目にするのはGeoGebraかもしれないけど - ** 3.1 いろいろなソフトがあったし,今もある - Geometric Supposer (1987くらい?) -- このころは「図形は動かなかった」 - cabri geometry (1989くらい?) -- フランス, - Geometer's SketchPad -- アメリカ - Geometric Constructor (飯島, 1989-, DOS版の他 いくつかの版がある) -- 日本 - その他,日本では日本IBMが開発した,GeoBlockなど,いろいろなソフトがあった。 - シンデレラ -- 2000年頃。独自にいろいろなことができる,いわば第二世代。 - GeoGebra -- 今,元気 -- dymanic mathematicsを標榜 -- 幾何以外にも,関数,表計算,数式処理など,包括的にいろいろなことができる。 **3.2 いろいろな表現 - dynamic geometry software - dynamic geomatry environment - interactive geometry software - 作図ツール(飯島の造語) - 動的幾何ソフト - 動的幾何環境 **3.3 GC/html5の特徴 -創成期からある -複数の版を重ねてきている -日本での「授業研究」を重ねてきている -フリーソフト(GeoGebraなどでは当たり前感が強いかもしれないが,1990年代では珍しかった) -教科書とも連携している(フランスの教科書では,2000年頃からcabri, GeoGebraを使っていた) - ブラウザだけで動作するので,インストールは不要 - マルチタッチ可能 - 基本的に,中学校・高校での利用に焦点を当てている *4.「体験すること」のお勧め -だって,みなさんが子どものときには経験しなかったのだろうから -でも,子どもにとっては,それが出発点なら「当たり前の存在」になる。 -その中で「自然に思えるもの,ことはなにか」から出発しないといけない。 **4.1 授業では「体験」重視 -ある意味,「模擬授業モード」に近い感覚で行います。 -生徒目線で,「何を学び,何を体験できるか」を感じ,それを客観的に考えられるようにしてください。 -教師目線で,「自分だったら,どうすると,よりよい授業にできそうか」を検討してみてください。 -そういうことの総合的なアウトプットとして,「動画作成」を位置づけていきます。 **4.2 ここに書いたことは - ここに書いていることは,基本的に「背景」なので,授業の中では扱うことがあるとしても,それはテストなどに出す話題にはしません。 - でも,興味がある方は深掘りする価値はあると思うし,授業以外での質問・議論等は歓迎します。 - いろいろな意味で,「授業で学ぶべきこと」と,「勝手に学びたい方のために提供すること」は違うのです。 - 同時に,「みなさんにとっての学び」も,次の意味で,「違う」はずなのです。 -- 単位取得(資格取得)のために,不可欠なこと -- 小学校,中学校,高校教員として「通用」するために不可欠なこと -- 教員としての教養のためにあるといいこと -- 教員以外の職も想定したときに,資質向上に役立つこと(反面教師も含めて) -- 一人の人間としての興味・関心を広げ,深めるために - 私は,単位の提供のためだけに,この時間を共有しているつもりでもないのです。