**探究/いろいろな場合を調べる
***背景 ****教科書などの図の「意図」と「読み方」 -教科書等の図では,「代表的特殊」の図が使われている。 - つまり,「特殊な条件を持たない」という意味での「一般的な図」が使われている。 - たとえば,四角形だったら,正方形や長方形ではなく,「一般的な四角形」の中の一つが使われる。その図で成り立っていることは,「他のどんな四角形でも成り立つ」という意味で使われている。
- しかし,「そういう意味」が了解されていないと,「めったに見ない特別な図」が教科書に書いてあって,「この図については,そういうことが成り立っている」けれども,「他の図でそうなるかどうかはまた別の問題」と解釈する子(人)がいてもおかしくない。 - 実際,「一般的な四角形とはなにか」「特殊な四角形とはなにか」を質問してみると,私たちとは逆の理解をしていることも決して少なくない。 ****問題文にあった図をかくには -中学校では多くの問題では図がかかれている。 -一方,「問題文から条件にあう図を自分でかけることが大切だ」という主張を聞くこともある。 -きちんと理解している子なら,「問題文にかかれている条件だけをみたし,それ以外の特殊な条件など成り立たない,という意味での一般的な図をかく」だろう。 ****かきやすい図では,「いろいろな図をかく」ことを求めている -それを乗り越えるための基本的な方法は,「実際に,いろいろな場合を観察する」ことだ。 - 紙と鉛筆であれば,「いろいろな場合を実際にかいてみる」ことが基本だ。 - でも,それは簡単にできる場合もあるけれど,図によっては,それはむずかしいこともある。 -中学校教科書の場合,それを求めているのは,中点連結定理やその発展問題としての,「四角形の4つの辺の中点を結んでできる四角形の問題」くらいではないだろうか。 *** 「いろいろな場合を調べる」 ****現行教科書で行われていることと限界 -中学校教科書の場合,「四角形の4つの辺の中点を結んでできる四角形の問題」では,一般の場合の他に,ABCDが長方形やひし形の場合を問題にしていることもある。 -これは,「いつもなりたつこと」だけではなく,「いろいろな場合を調べて,その結果を整理すること」を実現しているといえるだろう。 -実際,フリーハンドでかくだけで,かなり精確な図がかけるので,可能なのだ。 -しかし,それ以外の問題では「条件変え」等の形で提示していることが多い。 -図をかくのは,簡単ではないから,「いろいろな場合を自発的に調べる」ことはむずかしいことに起因しているのだろう。 ***動的幾何ソフト=「いろいろな場合を観察できる」ことの日常化 - それを根本的に変えてくれるのは,GCのような動的幾何ソフトである。 - 「図形を動かして,いろいろな場合を観察してみよう」という投げかけが可能になる。 - 教科書の問題で「それをするのが不可欠」と思われているものが,QRコンテンツとして実現されている。 - 「この問題もできる方がいい」事例は,デジタル教科書に収録されている。 - 「ほぼどんな問題でもそれを行える」のが,GCなどの動的幾何ソフトで,「さらにいろいろな問題」についてしたければ,ソフトそのものを使って自分で作図すればいい。 ****(1) 確認しよう - 「百聞は一見にしかず」 - 注目したい命題(定理)等を意識化しておいて,「それが成り立つ」ことを,提示するようなケース。 - 短時間で分かりやすい説明するときには適切。 -教師の機器をプロジェクタ等で提示するのに適している。 - ただし,注入的・受け身的ではある。 ****(2) 負事例とともに提示 - 上記において,「こういう場合にこうなる」という命題の場合は,その境界を意識できる方がいい。 ****(3) どんなことが成り立っている? - 注目すべき命題を提示しないで,「それを発見しなさい」と投げかける。 -- 目の前の図や問題文から「仮説」を考え,観察を通してそれを「検証・修正する」ことを求める。 --このあたりの活動も含めるなら,生徒用の機器で実験させる方がいいだろう。 ****(4) どんなときにどんなことが成り立ってる? - たとえば,「四角形」について考える場合でも,「いつも成り立つ」一般的なことの他に,「特殊な場合に,特殊なことが成り立っている」のが普通だ。 - つまり,「どんなことが成り立っている」という発問だけでは適切でなく,「どんなときにどんなことが成り立っているのか」を組織的に調べることが出発点になる。 ***「対応表」 -GCを使った授業では,「いろいろな場合を調べる」ために,下記の対応表を使うことが多い。 -@st_corresponding_table.htm,対応表