[目次]

4.数学B 複素数平面に関連して


4.1 問題点としての「幾何的な側面の不足」

この単元で作図ツールを使う意義はどういうところにあるでしょうか。基本的には,複素数に関する幾何的な側面が不足していることをカバーすることと言えるでしょう。この幾何的な側面というのは,「写像」としての側面であり,「変換」としての側面ともいえると思います。

これを授業等で扱おうとする場合,いくつかの段階があるように思います。思いつく範囲で,以下に列挙してみましょう。


4.2 軌跡の確認

問題1:点 z が原点を中心とする半径 2 の円周上を動くとき,次の式で表される点 w はどのような図形を描くか。
(1) w = i z + 1
(2) w = 1/z
(3) w = 2i(z + 2)
(4) w = 2z/(z - 2)
(啓林館,戸田,数学B,p.106)

この問題などは,代数的な変形をして答えを出すことが必要なわけですが,本当にそうなるのか,またどうしてそうなるのかなどの理解を支援することが考えられます。

(1) 通常の授業形態で式変形を行なった後で,
「本当にそうなるはずかどうか,確認してみよう」
できれば,像を作るときに,典型的な点の像の位置はそれだ大丈夫かどうかなどを確認しながら。
「ということで,確認できましたね。」

(2) 先に結果を観察し,それから式変形のやり方を考える
「結果はどうなるのか,まず実験してみましょう。」
やはり,典型的な点について推測・確認等をしながら,像を作る。
「さて,これは実験でしかないから,きちんと『証明』をする必要があります。
『証明』は式変形で示すことができますね。
元になっている式はどれでしょう。
結果として,どんな式ができるはずですか。
(軌跡の結果から読み取る)
元の式から,この式に変形できる「らしい」ことが実験から分かったんだけど,どうやったらいいかな。

なお,点の対応を考えるときには通常の変形で,円の像を考えるときには,シフトキーを押しながらの変形が便利です。


4.3 演算や関数の点対応の仕方の理解の支援

問題2: z,z2,z3,z4,z5,z6,z7,...を並べるとどうなるでしょう。

問題3:w = 1/z によって,(0,i)を通って 実数軸に平行な直線はどう写るか

和の場合は,ベクトルとしての和つまり直交座標系での理解が必要です。積・商の場合は,偏角・絶対値,つまり直交座標系での理解が必要です。

(1) 一つの画面を眺めながら,
結果を予想してみる。
その確認を,「少しずつ」してみる。
「この点はどのあたりに写るはずだろう」
「やってみようか」
「今度は」
「全体がどうなりそうか,もう分かったかな」


4.4 代数多項式の解の存在

問題4:z2+z + 1 = 0 を解け

まず,これを w = z2+z + 1 という関数,複素数関数として捉え直し,
「いろいろな値を代入すると,いろいろな値になる」
ことを実際に実感し,
「どんな値を代入すると,w = 0 になるだろうか」
という問題に変換して取り組んでみるということが突破口になるでしょう。
同様のことをいろいろな式に行なうことによって,「代数学の基本定理」を「経験的に実感する」というような側面にもなりえます。


4.5 変換の不変要素

複素数関数によって,ある形がどんな形に写るのか,ということに焦点を当ててみるのも,一つの手がかりになるかと思います。実際,大学入試問題などにも,直角三角形や正方形の像を求める問題などがあります。
結果としては,いくつかの線分の像を正確に計算できればいいとも言えますが,その背景には,例えば複素数の1次関数(1次分数関数)はいわゆる円円変換であり,直線・円は,直線・円に写ることを素材にしていることは明白です。
それを数式できちんとフォローするのは大変ですが,実験結果からアプローチするのは可能性があるのではないでしょうか。

関連資料


4.6 追加:極座標形式

講座の資料を印刷してから,次の内容を作ってみましたので,ここに追加しておきます。

直交座標系と極座標系
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